Cheap Trick live in Japan 2013
at O-East, Shibuya 8/8
at Summer Sonic Festival 8/10
(Mountain Stage)
2013年8月8日・渋谷O-East
 「The Latest」という、Cheap Trick史上に残る傑作のツアーでも、来日公演は実現せず、前回の来日から5年の月日が流れた2013年。突如として発表されたサマー・ソニック出演のアナウンスには驚きを隠せなかった。ニュー・アルバムがリリースされた訳でなく、2008年のように「at武道館リリース30周年」というメモリアル的な何かがあった訳でもない。単に"サマソニベテラン枠"的な扱いで選ばれただけだったのかもしれないが、理由はともかくCheap Trickが再び日本の地を踏むという事実に胸が熱くなった。嬉しかった。
 
  一度、バンドの公式Facebookで発表されながら、何故かすぐ消去され、暫くしてから再び正式発表となった単独クラブツアーも正式決定。 1300人収容の東京O-East、900人収容の名古屋ダイヤモンド・ホールは、5年前の公演が武道館であることを考えると驚くべき小規模のサイズの箱であり、聞けば何とO-East公演はチケット発売開始20分足らずでソールドアウトしてしまったそうだ。
 
  2003年以来、10年ぶりとなるサマー・ソニック出演。ツアーを離れたバーニーに代わり、ダックス・ニールセンが参加した初めての、そして、2011年の東日本大震災以来、初の来日公演であった。
 
  オリジナル・メンバー3人。リック、ロビン、トムの年齢は気付くと皆60を超えていた。しかし、ステージ上の3人は何も変わっていなかった。いや、ステー ジ中央奥でドラムスを叩くダックスの存在感と音は、確かにCheap Trickサウンドに新生面を与えていたし、セット・リストもこれまでのツアーと大きく異なっていたけれども、彼らの根幹にある主張は全く揺るぎがなかった。ステージを見つめる自分の目から、気付くと涙がこぼれていた。変わってしまったのは自分の方かもしれない。Cheap Trickを聞いて、こんなに感情的になってしまうなんて。
 
  多くのお友達から、前日の名古屋公演が如何に素晴らしかったか話を聞いていたので、期待は大きかったのだが、この東京単独公演も素晴らしかった!
- set list -
1.Hello There
2.Elo Kiddies
3.Just Got Back
4.Ain't That A Shame
5.Come On, Come On
6.Taxman,Mr.Thief
7.On Top Of The World
8.Way Of The World
9.Southern Girls
10.Need Your Love
11.I Know What I Want
12.If You Want My Love
13.Stop This Game
14.Voices
15.Wrong All Along
16.I Want You To Want Me
17.He's A Whore
18.Dream Police
- encore -
19.California Man
20.Surrender
with Hot Chelle Rae
21.Gonna Raise Hell
22.Goodnight
 
  お馴染みになった開演前SE〜70年代の日本の「天国の罠」のテレビ・コマーシャルでにやりとさせ、ホーマー・シンプソンの台詞("I prefer to listen to Cheap Trick")が入り、最後"Stop This Game"のコーダ部分で緊張感を煽り「Please welcome the best fucking rock band you've ever seen…Cheap Trick!」というアナウンスとともに一気に"Hello There"に突入する劇的なオープニング
 
  もう過去に何度となく聴いた"Hello There"のカッコよさに震えを覚える。生で見るダックスのプレイは、やはりバーニーのスタイルと全く異なっていたけれども、そのパワフルなサウンドは、老いてなおアグレッシブなCheap Trickのサウンドに更にダイナミズムを加味していた。

  私は1階フロアー、3列目で見る幸運に恵まれた。正直、今回はオープニングから高揚したまま無心でステージを見つめていた為あまり細かい分析はできないのだが、メンバー4人の存在感に最後まで圧倒されっぱなしだった。ロビンはシックな黒いスーツと帽子。トムはスタンドカラーのジャケット。リックはいつものようにビシッと黒のスーツできめていた。メンバー皆、年相応にルックスは枯れているけれど、ロビンのシャウト・ヴォーカルも、リック、トムのキレのあるプレイも衰えはなかった。リックのジャンプ力だけは、流石に高さがなくなってきている気がするけども (笑)

  ダックス加入以降の、セット・リストのバラエティの豊かさと、演奏時間の長時間化は、よく知られるところであるが、この東京、名古屋の単独2公演でも、両公演で被った曲は総演奏曲数の半数に満たない11曲。いかに今のCheap Trickがフレキシビリティに溢れているかを実感させた。それだけに、東京、名古屋どちらか一公演のみ参加されたファンの方は「あの曲も聴きたかった!」という気持ちも湧いてきたのではないかと思うが、この長い間日本でプレイしていない曲、初めて日本でプレイした曲を多数フィーチュアしたセット・リストには総じて満足された方が多いのではないだろうか?
 
  シンプルかつスピーディで、テンションを一気に高める〜セットの中でアクセントとなる役割を果たすと思われた"Sick Man Of Europe"がプレイされず、Cheap Trick'97のレア曲"Wrong All Along"が登場したのはちょっと意外だったが、70年代の楽曲を中心に、Cheap Trickの多彩さが詰め込まれた2時間のライヴは、最後まで全く飽きさせない極上のロック・ショウだったいえる。
 
  10年以上ぶりに生で聴く曲が過半数で、90年代以降の曲が少なくても新鮮だったが、中でも感激したのは初めて生で聴く"Way Of The World" この壮大で美しいコーラス・ハーモニーを持つ名曲が今回の来日で披露されたのは、O-East公演のみ。運が良かった!
 
  Cheap Trickを代表する2曲の長尺曲〜「Dream Police」アルバムで対をなす"Need Your Love"と"Gonna Raise Hell"が両者ともセットに組み込まれたのも、ダックスを擁した今の編成ならではの選曲といえるだろう。メロウで、展開美をもつ"Need Your Love"でのロビンの表現力は相変わらず素晴らしかったし、ダックスの視覚的にもサウンド面でも鮮やかなドラム・ソロを盛り込んだ"Gonna Raise Hell"は、これまでの同曲の持つ荘厳さとアグレッションというイメージにエンターテインメント性が加味され、新たな魅力を発していた。
 
  アンコールでは、同時期にサマー・ソニック出演の為来日中だったHot Chelle Raeのライアン・フォリース(vo)とナッシュ・オーバーストリート(g)が"Surrender"で飛び入り出演。親子のような年齢差をもつ両者の共演は微笑ましかった。(Hot Chelle Raeは、この日同様、自身のサマソニでのステージでもCheap TrickのTシャツを着て演奏)
  
  さて、そのサマー・ソニックでも熱演を見せてくれたCheap Trick 東京、大阪とも1時間ちょっとの演奏時間と、単独の役半分のにまとめられたセット・リストであったが、単なる"短縮バージョン"で終わらせないのが流石 だ。特に奇抜なことをせずとも、変わった曲を演らずとも、パズル(楽曲)の組み合わせを自在に変えることによって、巨大アリーナ向けのテンションとショウの流れを生み出すことができるのだ
- set list - 
1.Dream Police
2.Clock Strikes Ten
3.Gonna Raise Hell
4.California Man
5.Ain't That A Shame
6.If You Want My Love
7.That 70's Song
8.I Know What I Want
9.Need Your Love
10.I Want You To Want Me
11.Sick Man Of Europe
12.Surrender
13.Auf Wiedersehen
14.Goodnight Now
 
  サマー・ソニック東京のオープニングは、何といきなり"Dream Police"!最初は、当日撮影に入っていたWOWOWの放送向けの配慮かと思ったが、これは掴みのインパクトを狙った選曲と言ってよいだろう。マニアにはオッ!と意外性を与え、Cheap Trickを知らないファンは、キャッチー極まりないメロディで一気にCheap Trickの世界に引き込む。"Dream Police"でスタートするセット・リストは珍しいが、アルバム完全再現のショウだった「Dream Police Featuring Cheap Trick」を除くと、最初にダックスがバーニーの代役で入った2001年のツアーでも使われることがあった。間をおかず、シンプルで勢いのある"Clock Strikes Ten"で一気にテンションを沸点まで持っていき、ドラマティックな"Gonna Raise Hell"で空気をがらりと変える。既にここまでの3曲でCheap Trickの多様性が十分に表現されているのだ。

  2003年のサマー・ソニックでもプレイされた、大舞台ではかかせない"Ain't That A Shame"をはじめとする一連のヒット曲、代表曲の素晴らしさには改めて感銘を受けたが、驚いたのは"Gonna Raise Hell"のみならず"Need Your Love"までプレイされたことだ。単独公演ならまだしも、1時間ちょっとのセット・リストに長尺曲2曲を組み込んでくるとは。これは、今のバンドがいかに体力的に充実しているかの表れ、また、いかに「Dream Police」アルバムが強力なアルバムか、という表れとはいえないだろうか。因みに、今回の来日公演では「Dream Police」アルバム収録曲9曲中、実に7曲もプレイされている。クラシック曲をフィーチュアした一方で、終盤では最新作「The Latest」から、パワフル極まりないロック・チューン"Sick Man Of Europe"を披露。これぞ熟年のライヴ・バンドたる凄みを見せつけていた。

  Cheap Trickを生で見るのは最後かもしれない…という思いで臨んだ今回の来日公演。終わってみると、そのパフォーマンスの充実ぶり、ファンの熱いリアクションは、また日本で観れる、と期待できるに充分なものだったといえる。ロビンもMCで「これからはもっと頻繁に日本に来るよ」と言っていたね。近い将来の再会を期待して…リック、トム、ロビン、ダックス。有難う!待ってるよ!

(加筆修正:2022/2/25)

 
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