Guest Review
  単に、お友達にその方のフェイバリット・アルバムをレビューしていただくというのとはちょっと違います。管理人がセレクトした、レア盤、廃盤(若しくはその方が恐らく聞いたことがないと思われるアルバム)を、何を送るか予告せずに(笑)郵送して、レビューしていただくというドキドキする(強引な?)コーナーです。※レビュアーは随時募集中です!  メール掲示板にて管理人にお知らせください。

 
 Kevin Gilbert/The Shaming Of The True(2000)  by 鷹&虎 さん
Kevin Gilbert/The Shaming Of The True 1.Parade
2.The City Of The Sun
3.Suit Fugue(Dance Of The A&R Men)
4.Imagemaker
5.Water Under The Bridge
6.The Best Laid Plans
7.Certifiable #1 Smash
8.Staring Into Nothing
9.Fun
10.From Here To There
11.Ghetto Of Beautiful Things
12.A Long Day's Life
13.The Way Back Home
14.Johnny's Last Song

  今は亡きニュージャージー出身の天才シンガー・ソングライター/マルチ・プレイヤーによるコンセプト・アルバム。音楽業界のありのままの現実を、計算しつくされたサウンドのロック・オペラとして完成させた、ケヴィン・ギルバートの最高傑作である。
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  この「素人レヴュー企画」とでも云うべきコーナーの提案に賛同の意を表明してから1週間ほど経ったある日、KyotaさんからCDが送られて来ました。封入されていたそれは、やはり「新企画」の主旨に反する事無く、私が今日まで出会って来なかった作品であり、その1枚が今回の「Kevin Gilbert/The Shaming Of The True」なのであります。
 音を聴く前に私が知り得たこの人物についての情報は、Kyotaさんが同封してくれたメモに「故ケヴィン・ギルバート」とあったので既に他界されている人だという事と、例によって市販のCDと見紛うばかりに再現されているジャケットのパーソナル表記から、担当楽器を知るくらいでした。心優しい管理人さんは、ご友人が運営されているケヴィン・ギルバートに関して詳しいというサイトをご紹介下さったりもしたんですが、ここはひとつ丸腰で臨んでみようと決めていたので、このレヴューをお送りした後にゆっくり訪れてみようかと思っています。
 そんな訳ですので、見当ハズレなモノ云いや、間違った認識による発言もあろうかと思いますが、そこは後からご指摘を頂戴したいと考えております。その旨ご承知おき下さい。

 他人様と比べて特にへそ曲がりだという指摘をされた記憶もない私は、素直に1曲目から聴く事にする。ファースト・アタックの音に一瞬身構えるも、続いて聞こえて来るギター・サウンドに「肩の力を抜く」ように諭される。懐かしさすら覚える、この居心地の良さはナンだろうか。70年代中期から後期にかけてのトム・ウェイツ辺りのフレーバーも所々に感じられたりして……、既にしてこの時点で頭の中に浮かぶ風景は「街」だ。それが何処のどんな「街」なのかを探ろうとしていると、そこへとても魅力的なベース・ラインが聞こえて来る。もう次の曲になっている。聴く側を前のめりにさせる……或る意味プログレッシヴなサウンドで、今後の展開を期待させるに充分な2曲目の配置である。斯様な事に妙な感心をしてしまうのは、基本的にプログレ的な音に反応してしまうモノの性癖かも知れない。が然し、3曲目になるとそれまで曲調に気を取られていると思っていたのに、いつの間にかこの人の声に引き込まれている事に気付かされる。イチ時期のクイーンと云うか、フレディ・マーキュリー的なテイストのある曲だが、この楽曲はこの人の声で救われている。私はコレがフレディだと完璧にアウトなのだ。その苦味の強弱で、グレープ・フルーツの旨みが全く変わってしまう様に……。
 4曲目、この辺りまで来るとこの人物にタダならぬモノを感じてしまう。多くのミュージシャンに散見される「俺がフロント!」という香りがしないのだ。ジャケ裏を見ると彼のマルチ・プレーヤー振りも判るのだが、それ以前に例えばコンポーザーとして、或いはプロデューサーとして、もっと云えば人間としてその才に大きなモノがあるのではないか、なんて気がして来る。ココから数曲はずっとそんな事を考えて、この人の出自・経歴・天に召される事になった経緯・その時期、等を「知りたい!」と強く想いながら聴いていた。一歩間違えば扁平なポップ・サウンドになりかねない曲も、軽量化を図った素材による重厚感のあるデコレーションで仕上げてみたり、非凡なリズム・セクションの力量によって、フカフカし過ぎない上等なソファーに身を委ねている様な感覚をもたらせてみたり……と、とにかく多才である。う〜ん、ますますケヴィン・ギルバートなる人物が何者なのか、知りたくなって来る。そもそもこのアルバムは、彼にとって如何様な位置付けにあるモノなのか。どう見てもかなりの「場数」を踏んで来ているのは、確かだろう。アルバム中盤6曲目〜9曲目辺りの音の散りばめ方、出し入れには引き込まれるばかりである。
 そして10曲目……、マサに街の風景、それも雨上がりの夜を一人歩いている靴音……そんなモノに痺れてバーボンでも煽ろうかと思っていると、いきなり倉庫街の地下室に引き擦り込まれたかの様な、明らかにそれまでとは異質なサウンドにブチのめされる。ゴキュゴキュッというギターからは阿片窟の香りが漂い、そのドラム音からは頭を下げて夢中で首を横に振る人々の姿が浮かぶ。そしてこのリズムは、多くの日本人の中にある「祭りのリズム」と合致するのだ。ジェット・マシーン(なんて最近は云わないか)のかかったシンバルの音がなければ、鉢巻をした法被姿の行列が踊っていても不思議ではない。ケヴィン・ギルバートにかなりのポイントを奪われていた私は、ココで完璧にKOされる……。

 今ひとつ興味深いのは、ジャケットと歌詞カードに配されている版画調のイラストである。ジャケにあるケヴィン自身の写真とはかなりかけ離れたイメージのイラストで、コチラもとても惹かれるモノがある。ベースを持ったマリオネット、自分の首でジャグリングをする人物、泣き叫ぶ赤ん坊を抱いた墓場にいる女、衆人環視の中で止まってしまった空中ブランコに乗っている男、覚めやらぬ眼を泳がせる男……、これ等の持つ意味と歌詞が理解出来ればKyotaさんが云われる「コンセプト・アルバム」としての価値も判るだろうと思うと、自らの無学を恥じ入るばかりである。悲しい哉……。
 いずれにしても、此れ程完成度の高い作品を生み出している人物を知らなかった私は少数派なのかも知れないが、もし同様に未聴の方がいらっしゃれば是非お聴きになる事をオススメする次第である。

  末筆になりましたが、今回この様な場を与えて下さった事とこの作品に出会わせてくれた事に関して、Kyotaさんに心中より御礼を申し上げておきたいと思います。(11/3/2005)
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  鷹&虎さん:へヴィ・ロック、プログレッシヴ・ロックを中心に、クラシック・ロックにも造旨の深い、ロック・ファンの大先輩。
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