Set List:
1.Critical Acclaim
2.Remenissions
3.Beast And The Harlot
4.Burn It Down
5.Afterlife
6.Seize The Day
7.Almost Easy
8.Scream
9.Unholy Confessions
10.Brompton Cocktail
11.Bat Country
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アンコール含め約一時間ちょっとのライヴ。ちょっと短すぎるのでは…との不満が観たファンから結構出ているのを事前にネット上で目にしていたが、実際見終えてみて全く物足りなさは感じなかった。プレイされた曲のほとんどが"A7X印"ともいってよい、目まぐるしく場面展開する複雑な曲構成を持った曲ばかり。別の言い方をすれば、全くタイプの異なる曲を数曲折衷したような難易度の高い楽曲群を、卓越した演奏力とパフォーマンスでビシバシ決めるA7Xのライヴには、長い短いでは計れない濃密な時間が流れていた。
開始時間を5分ほど過ぎたころ、最新作「Avenged Sevenfold」同様"Critical Acclaim"の荘厳なイントロが流れる中、ステージ下手からメンバーがゾロゾロと登場。絵になるとは彼らのような人間のことをいうのだろう。「Avenged
Sevenfold」アルバムのジャケットを模したバックドロップが下げられただけのシンプルな装飾のステージが彼らが定位置についただけで一気に華やかになった。M・シャドウズの強靭な喉がいきなり炸裂した咆哮のイントロダクションからザッキー・ヴェンジェンスとシニスター・ゲイツによるズ太いギター・リフ、ジョニー・クライストの重いベースは身体に響き、中間部のメロディアスなギター・ソロとザ・レヴ(dr)によるコーラス・ハーモニーは聴覚に情感に訴える。A7Xの曲を聴いていると、普段感じない様々な感情が浮かんでは消えていくんだなぁ。ヘイ、ヘイという中間部のコーラス・パートは会場が一体となって大合唱。私のいた2階席は、年齢層が高かったこともあって(?)そうでもなかったが、1階フロアは早くも怖ろしいほどの熱気である。2曲めの"Reminissions"は「Waking
The Fallen」(2003)からの曲。一気にプログレスし新たなステージに進んだここ2作と比較すると、シャドウズのデス・ヴォイスからスタートするこの曲はまだオールド・スクール・メタルの影響の色濃いサウンドであり、"展開美"と呼べるほどのドラマ性は持っていないものの、中間部シャドウズがクリーン・トーンで歌い上げるパートには、既に萌芽していたA7Xミュージックの原型を見てとれる。ザッキーとシニスターのギター・ソロ・パートもカッコイイ! よく語られることだが、左利きのザッキーと、右利きのシニスターが寄り添ってフォーメーションを組むと、実に絵になるんだ。そして場内は3曲めで一気に沸点に達する。A7Xを代表する傑作の1曲"Beast And The Harlot"である。破壊力のあるギター・リフと、両手でマイクを挟み込むようにして全身で声を絞り出すシャドウズのシャウトはまさに"Beast"だが、一転テンポ・アップする部分は"ポップ"と表現したくなるほど爽快な響きをもっている。その後再びパワフル&美麗なツイン・ギターと、テンポ・チェンジするリズムがメリハリのあるドラマを生んでゆく。印象的なギター・ソロも組み込んだその閃きに満ちた構成は、まるでジェット・コースターのように息をもつかせないが、落ち着く間もなくザ・レヴのストロングなバスドラが響き、アルバム同様"Burn It Down"へと繋がってゆく。これまたPanteraの破壊力とジャーマン・メタルの軽快さを折衷したような独特のサウンドと構成を持つ曲なのだが、上手く香辛料(アレンジ)を塗し、クセを感じさせないノリのよいメタル・チューンに仕上げているのが良い。ザッキーとシニスターによるコーラス・パートも印象的だ。ライヴではジョニーを除く全員がコーラスを務めていたが、これは大きな強みだろう。「Avenged Sevenfold」収録の"Afterlife"はA7Xの楽曲中最もドラマティックという言葉が似つかわしい曲かもしれない。その大きなテーマの歌詞をそのまま具現化した大きな広がりを感じるサウンドを持った楽曲は、やはり一筋縄ではいかない構成をしており、また歌メロもかなり難易度が高そうだが、シャドウズは余裕をもってエモーショナルに歌い上げているのが印象的だった。サンプリングだと思うが、イントロと中間部のストリングス風パートもきっちり再現。ここで一息入れて、メンバーがローディらしき"ムキムキマン"氏(笑)と少し遊んだ後、アコースティック・ギターに持ち替えたザッキーのメロディアスなヴォーカルからスタートしたのは"Seize The Day" A7Xにしてはシンプルな構成の、最もメロディアスでエモーショナルで美しいパワー・バラードがショウ中盤に配され、美しいドラマを生んでいた。改めて感嘆するバンドの幅の広さと、シャドウズの歌唱力。シニスターの泣きを帯びたギター・ソロも良かった。そのシャドウズの"I'm Not Insane!"のコールが合図となり、ドイツのRageあたりを連想させるアグレッシヴ&メロディアスなギターのイントロが聴こえてくる。「Avenged Sevenfold」から"Almost Easy" これまた、硬と軟が絶妙に入り混じったA7Xならではのサウンドを持った傑作だ。その構築されたスリリングな展開は鳥肌ものだが、特筆すべきは様々なトーンを使い分けるだけでなく、実に歌心のあるシャドウズのヴォーカルである。彼の力量が、A7Xの優れた楽曲に更に魅力を加味していることは間違いない。また、シャドウズはフロントマンとしても実に映えるキャラクターで、屈強な体躯全体を使って声を張り上げ、また決して広くないステージを動き回りながらパフォームする姿は自信に満ちていた。途中でサングラス外してしまったけど、サングラスをかけていたライヴ前半は、そのモヒカン頭も手伝って"アグレッシヴなメイナード・ジェームス・キーナン(Tool)"という感もあった(笑) 「Avenged Sevenfold」収録曲"Scream"は、ヴァース部分がやや地味めなせいか?アルバムを聴いた時はそれほどインパクトを感じなかったのだが、こうしてライヴで聴いてみると、その風変りなギター・リフを持つ緊張感のあるイントロから、キャッチーなメロディを持つブリッジ〜サビへの展開はなかなか迫力があり、A7Xならではのアグレッシヴさとメロウさ。重厚なリズムを併せ持ったサウンドはとても心地よく身体に響いてきた。ザッキーとシニスターの息がぴったり合ったソロ・パートも実にクールだ。本編最後は、性急なドラム・ビート+スラッシーなギター・リフというクラシックなストラクチャーのメタルに、シャドウズの表現力を活かしたメロウなパートを配した"Unholy
Confession" "Reminission"同様、現在のA7Xの音楽性の核となる要素が詰め込まれたアグレッシヴな曲だ。正直、「City
Of Evil」と「Avenged Sevenfold」という2大傑作を聴いた後ではインパクトにやや欠ける「Waking The Fallen」だが、逆にこの今では聴けないデス・メタル的な荒廃したサウンドと、緊張感のあるギターはラストをタイトに締めくくった。
本編の盛り上がりの割に、以外に控えめな(…)アンコールの声に応えて始まったのは「Avenged Sevenfold」から"Brompton
Cocktail" 正直、この曲がアンコールで登場することに一瞬ン?と疑問符が浮かんだのだが("Lost"みたいなもっと疾走感のある曲が良いのではないかと…)、これがカッコ良かったのだ。地を這うような重いベースとギターのコンビネーションに、歌い上げるといった表現が相応しいシャドウズの熱唱。荘厳さが強調されたアレンジは「Avenged
Sevenfold」での新生面であるが、この起伏に富んだメロディを、パワー・ダウンせず実にエモーショナルに聴かせる術には有無をいわせぬ凄みを感じた。ラストは、これぞ究極という練り込まれた構成を誇る大傑作"Bat Country"一体どうしたらこんなスリリングな展開とメロディが思い浮かぶのであろうか!?
イントロの何かを予見するような不気味なイントロ〜シャドウズのスクリームから、突っ走るギター・リフを聴いてまず目に浮かぶのは、テレビのサマソニ特集で見た渦を巻くモッシャーの姿であるが、フロアに目をやると、やはりそれと同じ、完全に"出来上がった"男子達の姿が飛び込んでくる。そんな一瞬にして感情を高ぶらせる熱さとアグレッションは勿論だが、哀愁を感じさせるメロウさ、軽快なポップセンスといった様々な表現を1曲に封じこめることができるバンドなのだ、A7Xは。最新作「Avenged
Sevenfold」は強烈なインパクトを与えてくれるアルバムだった。A7Xを聴いていて、私がまず連想するのは"プログレッシヴ"という言葉だが、その音楽の咀嚼の仕方は過去のどのバンドも持ち得なかったものである。ロック・ミュージックの可能性を信じているからこそ生まれる斬新な音。そして、何よりロックのカッコ良さが皮膚感覚で身に付いている彼らには、ジャンルを超越したビッグ・バンドになるポテンシャルがある…そう確信できたライヴだった。
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