Cyndi Lauper at Orchard Hall, Tokyo March,17 2011



Memphis Blues(2010)
  忌まわしき東日本大震災が起こったその日に日本に降り立ったシンディ・ローパー。同時期に日本にいた、また来日予定のアーティストが次々に日本公演中止の決定を下す中、本人の強い希望で予定通りジャパンツアーを行うことを決定。

  「日本に背を向けて帰るなんて考えられなかった」

  当初はパスするつもりでいたこの公演。衝動的といってよい行動だった。続く激務の合間に、偶然のように開いた半日の休み。私の足は自然に渋谷に向かっていた。シンディの信念をこの目と耳で確認したい。シンディに会いたい。 当日券を入手する為に窓口に並んでいると、ファンの方がプロモーターのスタッフに話し掛けているのが聞こえてきた。 「今日のライブは、ちゃんと行われるか分からないんですよね…?停電が起きたら中止ですよね…?」「はい。(中止の)可能性はありますね…」

  果たしてライヴは無事スタートし、そして何事もなく終わるのか…。無事当日券を入手し、会場内へ。席につき、静かに目を閉じて開演を待った。 予定時刻を10分過ぎ、照明が落とされる。ステージにシンディの姿を捉えた時、それだけでぐっと込み上げてくるものがあった。

  さて、今回の「Memphis Blues Japan Tour」 この時期に行われたという意義以上に、パフォーマンス面でのクオリティの高さと、シンディの音楽面でのチャレンジ精神が、その内容を大変価値のあるものにしていたという事実をはっきりしておきたい。今日の主役はツアー・タイトル通りシンディの敬愛するブルース・クラシックを歌いあげた最新アルバム「Memphis Blues」だ。ライヴのMCで、音楽誌のインタビューで、そして「Memphis Blues」の限定版・日本版CD(会場で買ったらシンディの直筆サインがついていました!) のDVDでもシンディが語っていたように、"あらゆるポップ・ミュージックの源流"であるブルーズを、懐かしくも新鮮なスタイルで表現する。 ゲストのフリューゲルホーン/トランペット奏者TOKUを含めたバンド・メンバーは、そんなシンディ流ブルーズを具現化するのにうってつけの、素晴らしいテクニックとセンスを備えた職人達であった。全16曲中半数が「Memphis Blues」収録曲。腰の据わった土着的なブルーズと、キッチュで煌びやかなシンディのポップ・チューンを全く無理なく繋いでゆく。

  そして、改めてシンディのヴォーカルに感嘆!もう今年で58才になるシンディであるが、その声の伸びやかさは前回生で観た2004年公演を上回っているのではないかと思ったほど。若々しい部分はそのまま残しつつ、エモーショナルで深みのある歌唱にヴェテランとしての風格を漂わせる。エネルギッシュなステージングは80年代と同様。縦横無尽にステージを行き来し、踊り、ステージ下まで降りファンとコンタクトする姿を見ているだけで、嬉しくなったのは私だけではないはず。

  アルバム毎に、驚くほど大胆に音楽性の変革をするシンディだが、その普遍的なキャラクターは些かも揺らぐことはなく、驚くべきセンスで新しい曲もファンにアピールしてみせる。この日の本編のハイライトは、会場が一体となって盛り上がったボビー・ブランドの"Don't Cry No More"だったかもしれない。この曲でこれだけの盛り上がりを生んだ所に価値がある。

  終盤はお馴染みのヒット曲のオンパレードだ。アンコール。2004年同様にシンディがダルシマーを弾きながら歌う"Time After Time"  まさに希望の光を会場に照らした"Shine"  ゲストのTOKUによるトランペットが見事にシンディの歌と調和した"True Colors"と続く構成は本当に素晴らしかった。泣くまいと思っていたがこらえきれなかった。周りを見ると皆泣いていた。"True Colors"の昼間部でジョン・レノンの"Power To The People"のコーラスを歌い、拳を振り上げるシンディの姿は、自分の中にぐっと熱い何かを呼び起こした。

  「強い日本人なら、再び立ち直れる!」シンディは、日本人想いで、人間想いのチャレンジャーだった。シンディとそのクルー、関係者の方々へ。心から、素晴らしい時間を有り難う!  (3/26/2011)
Cyndi Lauper
- Vocal,Dulcimer

Steve Potts
- Drums

Michael Toles
- Guitar

William Wittman
- Bass

Steve Gaboury
- Keyboard

Archie Turner
- Keyboard

TOKU
- flugel horn,Trumpet
Set List:
1.Just Your Fool
2.Shattered Dreams
3.She Bop
4.Early in the Mornin''
5.All Through the Night
6.Lead Me On
7.Crossroads
8.Down Don't Bother Me
9.Don't Cry No More
10.The Goonies 'R' Good Enough
11.Change of Heart

Encore:
12.Don't Wanna Cry
13.Girls Just Want to Have Fun
14.Time After Time
15.Shine
16.True Colors
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