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Disc Review |
旧譜、新譜問わず、お勧めのCD/DVD作品を紹介します。
新譜(おおよそ3ヶ月以内にリリースされた作品)には
マークがついています。
★は管理人のお勧め度で、星5つで最高。
2つで大体平均点と考えてください(☆は1/2点)
※2003年9月以前のCDレビューはこちらです |
2004年
1月 / 2月 / 3月 / 4月 / 5月 / 6月 / 7月 / 8月 / 9月 / 10月 / 11月 / 12月
2005年
1月 / 2月 / 3月 / 4月 / 6月 / 7月 / 9月 / 10月 / 11月 / 12月
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2005年 8月(no.206〜) |
↓228↑ |
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The Everyothers/The Everyothers
(import CD/2003)
★★★★ |
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ちょっと前にブログでも書いた、ニューヨークを拠点に活動しているバンドのデビュー・フル・アルバム。メンバーはほとんどの曲の作曲を手掛けるオーウェン・マッカーシー(ヴォーカル、ギター)、ベン・トロ(べース、ヴォーカル)、ジョエル・B・キャノン(ギター)、ジョン・メヴィル(ドラムス) 2001〜2002年頃に、既に私は彼らのE.P.「Blue
Sky Down」他の音源を聴いていて、その楽曲の完成度と個性に注目していたのだが…
暫くしたらすっかり忘れてた(汗)
このアルバム、出たのもう2年前じゃん!いやしかし、かなり良いですよEveryothersは。彼らが影響を受けているのはオールド・スクールのブリティッシュ・ロック〜The
Who、Kinks、Small Facesといった60年代の名バンド(ちなみにメンバーのルックスはまんまモッズ)や、それらのバンドをルーツに持つCheap
TrickやPretenders、そしてパンク・ロック。 音を聞くとグラム・ロックの影響が特に目立っているが、Pixies風のヴォーカル・スタイルとギター・サウンドが聴けるオープニングの"Can't
Get Around It"に表れているように、ネオ・パンク/90年代オルタナティヴ的センスもしっかり取り入れ現代的なセンスも持ち合わせている。ギターは騒々しく、オーウェンは、吐き捨てるような力強い歌いまわしで、キャッチーなメロディを歌い上げる。メロディ・センスも演奏も、1stアルバムにして既に完成されており、各メンバーの色気のあるルックスと共に既に大物の雰囲気を漂わせている。"Make
Up Something"というクラシックを早くも生み出しているのも頼もしい。凄くクールな曲だよ、これは!"Make Up
Something"と同じく古いレパートリーである"Break That Bottle"や、アルバムの最後を飾るバラード"Dead
Star"なんかもいいね〜。それにしても、なんでこんなに素晴らしいバンドがまだ日本でまともに紹介されていないんだろう?! (7/31/2005)
PS
なんとドラムスのジョンはミック・ロンソンと仕事をした経験があるそうです。 |
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↓227↑ |
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The Dotted Line/The Dotted Line
(import CD/2005)
★★★★ |
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"The Dotted Line"とバンド名義にはなってはいるが、実際はドラムス、ギター、べース、キーボード、パーカッションとあらゆる楽器を操るマルチ・プレイヤー/SSW〜スコット・ベネットのソロ・アルバムである(バンドのメンバーがプレイしたのはわずかにTr.4"Temperamenntal
Side"のみ) スコットは、あのブライアン・ウイルソンのバンド・メンバーとしても活躍している。これは非常に自由度の高い、多面的なポップ・ロックの逸品だ。ブライアン・バンドの一員によるマルチ・プレイヤーのアルバムということで、ある程度の音の輪郭を想像して挑んだが、それは全く外れた。例えば、トッド・ラングレンやダグ・パウエルほどスコットの場合自分の"型"をかっちり構築していないし、音の組み立て方も彼らほど綿密でない。ちょっとマイナーな比較になるけど、クリス・ヴォン・スナイダーンほどスムースでなく、また、ロケサマのように一人バンドであることを逆に武器(個性)にしてしまうような意外性もない。
が、その超自然体なロック・センスこそがスコットの魅力だ。
コンセプトよりは先ず楽曲のクォリティありき、なまるでシングル・ヒットを詰め込んだ60年代のアルバムを連想させるようなつくり。本当に全11曲、どの曲をシングルにしてもおかしくないほどポップで、フックのあるメロディを持った佳曲揃いだ。ほとんどミディアム〜スロー・テンポの曲でまとめられているが、それがスコットの魅力的なヴォーカルを活かすのに大いに役立っている。インストゥルメンタリストとしての実力とセンスも賞賛に値するが、スコットの最大の売りはその艶やか且つ伸びやかなヴォーカルだ。本人も良くわかっているのだと思う。曲調がどうあれ、必ず自身の"歌い上げる"ヴォーカルをフィーチュアした、ヴォーカル・アルバム的な側面が強調されたプロダクションは、"プロデューサー"スコット・ベネットの判断力の確かさを表しているといえる。ただ、ヴォーカル重視とはいえ、アルバム全体としては骨太のロック・サウンドでまとめられており、曲によってはギターとヴォーカルのバランスが危うく、もう少しバッキングをおとなしくしてくれたら…と思える部分も。Beach
Boysクラシック"I Know There's An Answer"も、これだけの"声"を持っている人なら、もっと素直なアレンジでも良かったのではないかな〜と。ボーナス・トラックとして収録された"No
Wrong Notes In Heaven"はスコットと師匠ブライアン・ウイルソンの共作曲で、ブライアン自身もバッキング・ヴォーカルで参加している、アンドリュー・ゴールドとポール・キャラックとBeach
Boysを足して3で割ったようなユニークなサウンドとメロディを持った名曲だ。 私が「The Dotted Line」を聴き終えて最初に連想したのはエリック・カルメン。そしてこのアルバムは、スコットが今後もエリックのクラシックに匹敵するだけの名作を作り続けてくれると期待させるに十分な眩い光を放っている。 (8/24/2005)
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↓226↑ |
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Howard Jones/In The Running
(Japanese CD/1992)
★★★★☆
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ハワード・ジョーンズというと煌びやかなエレ・ポップでヒットを連発した80年代の印象が鮮烈で、90年代以降はちょっと…、もしくは90年代以降の活動はよく知らない、という方が結構多いのではないかと思うが、こと作品のクオリティをとると、セールス面での全盛期を過ぎた1992年にこんなに優れたアルバムを残していたのである。前作「Cross
That Line」(1989)でそれまでのシンセで固めたサウンドから逸脱した、バンド・アプローチ的な新たなアイデンティティを確立したハワードであるが、この作品はその方向性を更に推し進め、生音をフィーチュアしつつ、楽曲とアレンジの完成度を驚くべきレベルにまで高めている。1stシングルとしてカットされヒットを記録した"Lift
Me Up"やハワードらしいシリアスなメッセージを持った"Gun Turned On The World"等を除き、全体的なムードはいたって地味。初期の作品とは対照的に一聴してのインパクトに欠けるが、リピートするほどにハワードの歌の上手さ(本当に凄いですよ、この人の歌唱力は!)と練られたメロディの素晴らしさに感嘆させられる。プロデュースはロス・カラムとハワード。ミックスはボブ・クリアマウンテン。永遠に古びることはないであろう名盤だ。 (8/8/2005) |
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↓225↑ |
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Nik Kershaw/15 Minutes
(import CD/1999)
★★★★☆ |
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ハワード・ジョーンズと同様、80年代初期〜中期の音楽シーンに鮮烈な軌跡を残したニック・カーショウ。ブリティッシュ・インヴェイジョンの終わりと共に人気も下降し、セールス面でのピークの時期が非常に短かったため、また90年代に入って完全な"裏方さん"としての仕事が中心になってしまった為、ある意味"忘れられ度"ではハワードの上をいっているかもしれない。が、1990年代の終わりに突如(なんとオリジナル作としては1989年の「The
Works」以来約10年ぶり!)にリリースされた「15 Minetes」を聴けば、何故これほどの才能が長きに渡り表に姿を現さなかったのかと不思議に思うほどだ。個人的にはニックの最高傑作。アコースティックな"静"の部分を活かした、ACCなアレンジで比較的すっきりしたサウンドで全編まとめられているが、そこにニックの温もりのあるヴォーカルによって歌われる独特のポップなメロディが乗り、ユニークでありながら普遍性も十分に備えた素晴らしいポップ・ソング集として完成されている。80年代のニックの作品群よりぐっとバンド・サウンド的なスタイルになっているが、要所でテクノロジーも活かされており、ちゃんとニックの一貫したアイデンティティも感じられるのが流石。"Your
Brave Face" "Somebody Loves You" "Billy" "What
Do You Think Of It So Far?"etc.…名曲てんこ盛りです! (8/29/2005)
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↓224↑ |
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Nik Kershaw/Then & Now
(import CD/2005)
★★★ |
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どうやらニックのベスト・アルバム全部で7種類ほど出ているらしい。この最新ベストも先日CDショップでたまたま見つけて、おーまた出たのかと簡単にスルーしそうになったが、ちょっと待ったぁ! 新曲が入ってるじゃんこれ!! アルバムの最後にボーナス的に加えられた4曲の新曲以外の選曲は、やはりというべきか初期のヒット曲重視。↑に書いたように近年のニックのアルバムを評価している私としては、元々エルトン・ジョンのアルバム(「Duets」(1993))に収録されていた"Old
Friend"を入れるくらいなら、もっと「15 Minutes」(このベストに入っているのは"Somebody Loves
You"のみ…)や「To Be Frank」(同じく"Wounded"のみ…)の曲を、と思ってしまうが、まあいいか。どちらにしろニックの曲はオリジナル・アルバムで楽しむのが一番だからね(笑) "Times
Like These" "Dangerous Eyes" "Cloud
Nine" "What It Is"という4曲の新曲は何れも「15 Minutes」(1999) 「To
Be Frank」(2002)アルバムの流れを汲んだウェットで美しいメロディを備えた佳曲で、初期のような良い意味で奇妙なメロディやプログレッシヴな展開は望むべくもないが、落ち着いた中にもニックの独自性を十分感じさせる。経験を積み、20代とはまた別のステージで新たな個性を確立したニック。新しいオリジナル・アルバムが早く聴きたい! (9/12/2005)
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↓223↑ |
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Rick Springfield
/The Day After Yesterday
(import CD/2005)
★★★ |
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10ccの"I'm Not In Love" Dream Academyの"Life
In A Northern Town" Mr. Misterの"Broken Wigs" Human
Leagueの"Human" Foreignerの"Waiting For A Girl
Like You"にトドメのジョン・レノン"Imagine"と、'70〜'80年代の超有名全米トップ10ヒットが軒を並べた曲目を見ただけで思わず「おいちゃん、ベタやね〜」と口走りたくなる新鮮味のない選曲に、一瞬躊躇して店のCDストッカーから出したCDを元に戻しそうになった(笑) が、前作スタジオ「Shock/Denial/Anger/Acceptance」で、異様にパワフルな、進化するアーティストとしての姿勢をみせてくれたリックのこと、カヴァー・アルバムとはいえ今回もやってくれるのでは、と期待して購入。結果は…う〜ん、ほとんどの曲のアレンジに期待したほどの意外性はみられなかった。"I'm
Not In Love"はやや冗長に流れているし、"Life In a Nothern Town"や"Human"も思ったより普通。"Broken
Wings"もリチャード・ペイジがデュエットで参加した以外特筆すべきことはないし、Beatlesの"For No One"は誰がやろうとオリジナルを超えるのは至難の業だろう。それでも、本作には要所にハッとさせられる場面がありこれが捨て難いのだ。ジェリー・ラファーティの代名詞的ヒット曲"Baker
Street"(1978)は同じ大ヒット曲でもちょっと面白い選曲だし、年齢を重ね枯れた味わいの増したリックの声で歌われるBlue Nileの"Let's
Go Out Tonight"や、The Churchの"Under The Milky Way"も胸に染みる。そして、個人的ハイライトはAmbrosiaのデビュー
・アルバムからの大ヒット曲"Holdin' On To Yesterday"(1978年) 独自のアイディアを盛り込みながらコンテンポラリーにアレンジされたこの曲の解釈は素敵だ。この流れでくると、もしやGodley
& Cremeのあれか…と予想した"Cry"という曲がリック自身の新曲、それも非常に美しいバラードだったりして、ボーナスをもらったような気分になった。それにしても、来日公演してくれないかな〜リック。 (7/31/2005) |
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↓222↑ |
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Ambrosia/Ambrosia
(Japanese CD/1975)
★★★★ |
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Ambrosiaは1970年にLAで結成されたロック・バンド。これは、リック・スプリングフィールドがカヴァーした"Holdin'
On To Yesterday"を収録したAmbrosiaのデビューアルバムだ。Ambrosiaと同じくアメリカン・プログレの範疇で語られるKansasのデビュー作と同様、その内容は新人離れした完成度を誇る。溢れるほどのアイディアを、完璧なテクニックで複雑且つメロディアスな楽曲のなかに封じ込めながら、大衆的なポップ・センスも備えた至れり尽くせりの内容になっている。後に楽曲のスリム化と洗練をはかり"How
Much I Feel"(1978) "Biggest Part Of Me"(1980)といったAOR路線の曲で大ヒットを飛ばすAmbrosiaであるが、アルバム全体としてはその活動を通して常にソリッドでスリリングな部分も持ち続けていたことは記しておかねばならない。各インストゥルメンツの攻めぎあいと、楽曲の展開美から緊張感あるドラマと叙情メロディを産み出していたKansasと比較すると、Ambrosiaは展開のスリリングさももちろん売りの一つではあるが、ダイナミズムは抑えめに、あくまでもメロディ主体で進んでいったことが、多様性とロック・サウンドを保ちつつアダルト・コンテンポラリー・チャートにも自然に食い込めた理由かもしれない。Ambrosiaのアルバムには外れは無いので、とりあえずオリジナル作品は全部聴いて欲しいが、彼らのやりたかったことはこの1stアルバムを聴けばほとんど理解できる。 (8/10/2005)
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↓221↑ |
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David Pack/The Secret Of Movin' On
(Japanese CD/2005)
★★★★☆ |
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2003年に「Unborn」という80年代の未発表曲を収録したアルバムをリリースしているが(管理人未聴)、オリジナル作としては何と1985年の「Anywhere
You Go」以来20年ぶり! 元Ambrosiaのブレインであるデヴィッド・パックのソロ・アルバムである。コンテンポラリー・ジャズ/スムース・ジャズ界の大御所ラス・フリーマンが運営するPeak
Recordsからのリリースで、音楽のべースになっているのも完全にコンテンポラリー/スムース・ジャズ。ジャズと聞いただけでびくっと体が硬直してしまうくらいのジャズ恐怖症(過去5年でまともに聴いたジャズはジャコ・パストリアスくらいのものです(汗))の私は、3曲めの"Biggest
Part Of Me"(Ambrosiaのクラシックのリメイク)を聴いて一瞬え!?となったが、繰り返し聴くうちにその完成された心地良すぎる世界にハマっていった。多様な音楽的要素を盛り込んだスムース・ジャズ・マナーにのっとった、快適な音空間を演出する各インストゥルメンツのプレイの充実度は当然として、特筆すべきは50を過ぎた今でも全く昔と変わらない透明度を誇るデヴィッドの瑞々しい歌声だろう。アン・ウイルソン(Heart)、スティーヴ・ペリー、ティモシー・B・シュミットetc.
と強力なゲスト・ヴォーカリスト陣を迎えながら、彼らの歌がほんの飾りに感じられてしまうくらいに強烈な存在感を誇るその美声は、まるでこの人は時の流れを無視して生きているのでは、と思わせるほど。円熟しつつ、しかしレトロさを感じさせず新鮮な、絶妙なバランスを持ったアルバムだ。 (8/27/2005) |
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↓220↑ |
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David Pack/Anywhere You Go
(Japanese CD/1985)
★★★☆ |
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チャートでマイナー・ヒットを記録した"Prove Me Wrong"(映画「White Nights」のサウンドトラックにも収録)が、いかにも映画向けのダイナミズムを持ったロックなアレンジを施されているのを除き、全曲キーボードを大フィーチュアした洗練されたAOR曲/アレンジでまとめられているデヴィッド・パックの1stソロ・アルバム。AmbrosiaのメンバーやKansasのケリー・リヴグレン等もゲスト参加しているが、プログレ風味は全くなく、哀愁、泣きのメロディを持ったストレートな曲が爽快だ。いかにも80年代的な大仰なアレンジが今聴くとキツく思える部分もあるが、デヴィッドの伸びやかで美しいヴォーカルの魅力はやはり不変。後にリ・レコーディングされAmbrosiaのベスト・アルバムに収められる"I
Just Can't Let Go"や、"That Girl Is Gone" "Just
Be You"と聴きどころは少なくないが、個人的フェイバリットは何といってもオープニングの"Anywhere You Go"! このなんともいえない哀感を持った音空間は、デヴィッドならでは。 (8/27/2005) |
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↓219↑ |
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Amy Ray/Prom
(import CD/2005)
★★★★ |
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以下の条件に3つ以上当てはまる人はこの「Prom」を聴きましょう!(笑)
1.アメリカン・ロックが好き
2.パンク・ロックの持つ疾走感が好き
3.ラウドなギター・サウンドが好き
4.小・中学校の給食が好きだった
5.ただ明るいよりは、多少陰りのあるメロディが好み
6.Indigo Girlsのアルバムを聴いたことがある
7.Indigo Girlsのアルバムを聴いたことがない
今年の4月にリリースされたIndigo Girlsの片割れ、エイミー・レイによる、前作「Stag」(2001)に続く2ndソロ・アルバム。これは徹底して"ロウ(生)"な、ロックの根元に迫ったようなサウンドを持った素晴らしいロック・アルバムだ。
アルバム・タイトルや歌詞に端的に表れているように、ティーンエイジャーをテーマにしたコンセプトを持ったアルバムのようだが、この小細工なしにストレートに迫ってくるラフなサウンドが、儚くも煌いている"10代"というテーマにぴったりに思える。そして本作の特徴として、Indigo
Girlsと比較して言葉の表現が非常にダイレクトなことが挙げられる。(日本語訳詞が欲しいところ…) オープニングの"Put
It Out For Good"からしてこれはエイミーにしか描けないな〜という個性の強い世界だが、歌詞がわからなくたって怯むことはない。エイミーの真摯さはその力強い歌声からしっかり伝わってくるはずだから。私は「Stag」より本作の方がずっと好きだ。 (7/31/2005)
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↓218↑ |
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Beth Nielsen Chapman/Look
(import CD/2005)
★★★★ |
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昨年リリースされたゴスペル・アルバム「Hymns」(管理人は未聴)を挟み、オリジナルのスタジオ・アルバムとしては2002年の「Deeper Still」(日本盤未発売)以来の新作。90年代の私生活での辛い時期を乗り越え、アーティストとしての経験も積んだベスの懐の深さと円熟味が表れた素晴らしい内容だ。メロディの質感こそ全体的に暗めに傾いているが、楽曲のバラエティはこれまでの作品以上で、聴く程にその曲の持つ奥深さに引き込まれる。ポップ、バラード、カントリー、ジャジーなものetc.と音楽と名のつくものなら何でもござれ。しかし、ベスの良さはその器用さをあくまでもさり気なく出していることだ(だからこそアルバムにちゃんと統一感が生まれている) ラテン風リズムを持った軽快な"Free"などは、一聴してとても親しみやすいメロディなのだが、その実非常に練られた複雑なアレンジが施されていて驚かされる。ソングライターとしての天才的な技量はともかく、声質は少々個性に欠ける感のあるべスだが、そのヴォーカル力はここへきてさらに表現力を増したように感じるのは気のせいか。自身のきらめくように美しいメロディが、伸びやかでエモーショナルなこえによって最大限に活かされているのだ。Indigo
Girlsのエミリーやマイケル・マクドナルド、元David &Davidのディヴィッド・ベアウォルド他実力派ミュージシャンが多数ゲスト参加。 (8/6/2005)
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↓217↑ |
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Beth Nielsen Chapman
/You Hold The Key
(Japanese CD/1992)
★★★★ |
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世に数あるAOR系アルバムの中でも最高の清々しさを与えてくれるメロディ(しかし歌詞の内容は以外に重い)を持ったオープニング・チューン"I
Don't Know"で幕を開ける1992年発表のアルバム。"I Don't Know"に続くアルバム・タイトル・トラックがまた素晴らしく、べスのメロディ・センスが結集されたこの名曲2連発で早くも参りましたという感じだが、他にもバラードの"Say
It To Me Now" "The Moment You Were Mine"やポール・キャラックとデュエットした"In
The Time It Takes"等々聴きどころは非常に多い。中古CD屋で捨値でよく置かれているのを見るアルバムですが、見かけたら是非救出してあげてください。名作です。
(8/13/2005)
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↓216↑ |
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Beth Nielsen Chapman
/Beth Nielsen Chapman
(Japanese CD/1990)
★★★★☆ |
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1981年に「Hearing It First」というアルバムでデビューした後、ナッシュビルに居を移しソングライターとして活動した後1990年にリリースしたアルバム。80年代には、べスは主にカントリー系アーティストへ多く楽曲を提供しており、ここにも後にトリーシャ・イヤウッドがカヴァーしてヒットする"Down
On My Knees"やスージー・ボガスが歌う"I Keep Coming Back To You"等も収録されているが、全体的にはべスの温かいヴォーカルとキーボードをフィーチュアした洗練されたAOR作品に仕上がっている。しっかし改めて凄い完成度だ。前述した2曲の名バラードに加え、というかそれ以上に琴線を揺さぶるバラードの逸品"All
I Have" 日本のFMラジオでもへヴィー・ローテーションされた"That's The Easy Part"といった曲まで入っているのだから凄い。 (8/27/2005) |
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↓215↑ |
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Faith Hill/Fireflies
(import CD/2005)
★★★☆ |
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日本盤でもやっとフェイスのカタログが揃い始めた「Faith」(1998 ※ちなみに、このアルバムからヒットした"This Kiss"は↑のべス・ニールセン・チャップマンの作品)アルバム以降、音楽性はどんどん洗練を極め(というか、洗練されたから日本盤が出たのだと思うが)、コンテンポラリー・カントリー/カントリー・ポップというよりは「カントリー風味もあるポップ」路線で人気を拡大してきたフェイスだが、最初の2枚「Take
Me As I Am」(1993)と「It Matters To Me」(1995)を死ぬほど聴いた私としては楽曲のクオリティはともかく、アイデンティティが希薄になりつつあったその音楽性にはどうも納得のいかないものがあった。「Faith」収録曲をポップ寄りにコンテンポラリーにアレンジした「Love
Will Always Win」(1999)なんてアルバムがあったように、アレンジを変えることで幅広い層にアピールしていたフェイスであるが、その後は楽曲の骨組み自体をコンテンポラリーなポップ・ソングにしてしまったことでいちいち表情を変える必要がなくなったのだ。この新作はやや初期の方向性に揺り戻されたような内容。甘みを抑え目に、あくまでもカントリーの枠組の中でポップ&メロディアスな曲を表現している。つまりは優れたコンテンポラリー・カントリーということ。私はこの路線大歓迎です。しかし改めてフェイスは歌がお上手! (8/13/2005)
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↓214↑ |
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Kelly Willis/Kelly Willis
(import CD/1993)
★★★★
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フェイス・ヒルの「Fireflies」にバック・グラウンド・ヴォーカルで参加しているオクラホマ出身のカントリー・シンガー〜ケリー・ウィリスの3rdアルバム。
1993年の作品。これはコンテンポラリー・カントリーのお手本ともいえる隠れた傑作だ。特に、カントリーはちょっと…と思っているロック/ポップ・ファンにも聴いてほしいな。ケリーの瑞々しい声で歌われる、素晴らしくポップ&キャッチーな楽曲の連続に心が躍る。素朴で洗練"され過ぎない"アレンジがまたいいんだ。プロデュースはドン・ウォズとトニー・ブラウン(13曲中2曲はドン・ウォズ、トニー・ブラウン+ジョン・リヴェンサールのプロデュース) ゲストにはJellyfishのロジャー・マニングとアンディ・スターマー、そしてアンドリュー・ゴールドも参加。"Heaven's
Just A Sin Away"はKendallsの1977年のヒット曲で、"Whatever Way The Wind
Blows"はマーシャル・クレンショウの作品。こうやってクレジットを並べるだけでも興味が少し湧いてきませんか?(笑) (8/13/2005) |
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↓213↑ |
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Giant/Last Of The Runaways
(import CD/1989)
★★☆ |
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今やアメリカの音楽シーンを代表するプロデューサー/セッション・ミュージシャンになった(↑のフェイス・ヒルの新作にも参加しとります)…ていうか、この「Last
Of The Runaways」がリリースされた時点でも既に相当のステイタスを築いていたが、ダン・ハフ(リード・ヴォーカル/ギター)率いるHRバンドのデビュー作。いつか中古で見かけたら手に入れようと思っていたが、忘れた頃に捨値(400円)で発見したので即ゲット。テリー・トーマス(ex.Charlie)をプロデューサーに迎えてイギリスでレコーディングされた本作は、サウンドに英国的な冷ややかさ、陰りを感じる部分もあるにはあるが、やはり全体的には磨き上げられたアメリカン産業ロック的プロダクションに仕上がっている。アルバムよりのリーダー・トラックになった王道ハード・ロック"I'm
A Believer" そして日本でもMTVで、ラジオでガンガン流れ1990年春に大ヒットを記録したバラード"I'll
See You In My Dreams"は、当時の私はよく出来てるけど面白みがあまりないな〜と思ったものでしたが、今聴いてみると"I'm
A Believer"の"弾きまくり"なギター、そして"I'll See You In My Dreams"の意外なほど熱く、エモーショナルなヴォーカルと、ダンの存在感に驚かされる。ギターのテクニックは重々理解していたけれど、歌も凄く上手いですねこの人は。前述した2曲のヒット曲もアルバムを代表する曲だが、私の一押しは9曲めの"Hold
Back The Night" 哀メロ好きのアメリカンHRファンは、この隠れた名曲1曲の為だけにでも、アルバムを聴く価値がある、と思う。 (9/2/2005) |
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↓212↑ |
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Semisonic
/The Universal Masters DVD Collection
(Japanese DVD/2005)
★★★ |
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例えば、将来Semisonicを知らない世代の人に、Semisonicがどんなバンドなのか伝えるとしたら…なんて考えるとこれはかなり難しい。あなたならまず最初にどのアルバムを聞いてもらう?
例えば、このビデオを見て初心者の人にSemisonicというバンドの本質をわかってもらえるだろうか? 改めて各アルバムを繰り返し聴いてみたけれど、恐ろしくミュージシャンシップの高い、奥深い楽曲をプレイしている人たちである。過去ロック・シーンにおいて、多くの素晴らしいトリオが生まれたけれど、間違いなくSemisonicも(音楽性は違うとはいえ)PoliceやRushと並んで「最強」の称号を得るに相応しい実力を備えたトリオといえる。↓で紹介したオリジナル・フル・アルバム3枚のアルバム毎の成長は、単にひとつのスタイルの積み重ねでなく、夫々のアルバムが夫々別の装いを持ちつつ、そのワクの中でつくられた傑作なのである。ホップ、ステップ、ジャンプでなく全てのアルバムがジャンプ!アルバム毎にそのテーマは完結! しかし、全てのアルバムには確固としたSemisonicサウンドが根幹をなしている。個々のメンバーの持ちえる類まれな個性が、あれだけの早さでの変化と進化を可能にしたのだといえるだろう。そして、バンドの存在自体が既に十分ユニークなのだ、ということをこのビデオ・クリップは良く理解させてくれる。やはり凝り過ぎず、バンドの演奏をメインに捉えたPVほどカッコよく魅力的なのだ。メンバーの様々な表情とクールな演奏シーンをしっかりとらえつつ、らしい"遊び"と"ストーリー"を挿入した"Singing
In My Sleep"と"Chemistry"が突出して楽しめた。いかにも低予算という"The Prize"や、「Great
Divide」からの"Down In Flames" "FNT" "If
I Run"といったところも悪くはないけれど、画像や編集がイマイチで、展開がせわしなく落ち着いてメンバーを見せてもらえないものが多い。それにしても、最後の"Get
A Grip"はやっぱり"遊び過ぎ!" はじめて見るSemisonicのPVがこれだったら、その人は一体Semisonicってどんなバンドなんだ!?って思ってしまうだろうね(苦笑) う〜ん、やっぱりこうやってズラズラPVを時代順に並べて見るのはあまり面白くないなあ。個人的希望としては、こういったかたちでクリップ集出すなら、全てのアルバムをリマスター再発して、エンハンスド・トラックとして各アルバム収録曲のPVを収録してほしかったな。そして、何でもいいから1つライヴDVD出してよっ! (9/12/2005) |
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↓211↑ |
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Semisonic/All About Chemistry
(Japanese CD/2001)
★★★★☆ |
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Semisonicの個人的ベストはこのメンバー自らプロデュースした3rdアルバム!ポップさとハードさ、実験性と普遍性のバランスが絶妙で、ダン・ウイルソンのメロディ・センスもどんなタイプの楽曲においても抜群の冴えを見せている。ダンの艶やかな歌声を飾りたてる洗練されたエレガントなアレンジは時にAOR的な響きを醸し出すが、決して甘さだけに流されることなく、全編通してロックなエッジを保っている。ヴォーカル・パートと同時に各インストゥルメンツを"聴かせる"パートが要所で光っているのも◎ (私は特にジェイコブ・スリクター(Dr)のパワフルでタイトなプレイが好きだ) 3人のマルチ・プレイヤーぶりが存分に発揮されたサウンドのバラエティを提示しながら、アルバムには一貫したカラーがある。そして、それがブリティッシュ・ロックでもアメリカン・ロックでもないSemisonicにしか成し得ない世界なのだ。キャロル・キングと競演した美しいバラード"One
True Love"をはじめ、"Chemistry" "Act Naturally"
"Get A Grip"他、名曲揃いの傑作。 (7/30/2005)
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Semisonic/Feeling Strangely Fine
(CD/1998)
★★★★ |
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はじめて聴いたSemisonicのアルバムがこれならまた違ったんであろうが、「Great Divide」をかなり聴きこんでいた私にとっては、最初このサウンドの変化にはかなり面食らった。プロデューサーにリック・ローネイを迎え製作した2ndアルバムは、「Great
Divide」とは対照的に時代の空気をたっぷり吸い込んだ、シンプルでストレートな作風。だが、サウンドが変わろうと、メロディの質の高さは変わらず。中でも1stシングル"Closing
Time"は大ヒット。更に"Singing In My Sleep" "Secret Smile"もチャートで健闘し、アルバムはバンド史上最大のセールスを記録した。
(7/30/2005) |
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↓209↑ |
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Semisonic/Great Divide
(import CD/1996)
★★★★ |
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これは当時、かなりの「先物買い」でゲットしたアルバムだ。恐らく輸入版がCDストアに並んで間もなく、バンドに関する何の知識も情報もないまま、ジャケットに書かれた"produced
by paul fox"の名前を発見し即購入。10.000Maniacsの「Our Time In Eden」(1993)、XTCの「Oranges
And Lemons」(1989)という個人的に"超"のつくフェイバリット・アルバムを手掛けたプロデューサーが関わったバンド故、絶対に自分にアピールするものがあるはずだと過剰な期待をもって挑んだのだが、予感は的中。XTCに通じるちょっと風変わりなサウンド。そして凝った楽曲構成。そこにダン・ウイルソンの持ち味である柔らかで憂いのあるメロディ・センスが加わり、フル・アルバム1作めにして(メンバーがTrip
Shakespeareでキャリアを積んでいたのを知ったのは、かなり後になってからでした…)既に唯一無二の個性を確立している。ダンはその仕事のやり方に不満もあったらしいが、カラフルで凝ったサウンド・メイキングを得意とするポール・フォックスとバンドの相性は決して悪くなく、マイナス面はほとんどといってよいほど感じられない。まるでそのカラフルなジャケットに表れているように、聴いていると人間に起こるあらゆる感情が浮かんでは消えていくような不思議な感覚に襲われる。 (7/30/2005) |
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↓208↑ |
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Del Amitri
/The Universal Masters DVD Collection
(Japanese DVD/2005)
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某大手輸入CDストアを徘徊していて"たまたま"発見。初回生産限定だそうで、今日見つけてなければ知らないまま終わっていたかも。だって、今のところのスタジオ最新作「Can
You Do Me Good?」(2002)は、ついに日本盤発売されなかったぐらいだしねえ。まさか今頃こんなビデオ・クリップ集が日本で出るとは思わないよ。Del
Amitriは映像作品では過去、1996年に「Let's Go Home」というUSツアーのドキュメンタリーにアルバム「Twisted」(1995)よりのビデオ・クリップを絡めたビデオをリリースしているけれど、これが内容、構成はともかく、ただでさえ英語苦手なのにメンバーのスコットランド訛りの英語が聞き取れなくて純粋に楽しめないところがあった。しかし、この代表的なPVをずらっと並べたコンピレーションならそんな言葉の心配は無用。乳母車に乗ったメンバーの映像がお茶目な最大のヒット曲"Roll
To Me"から、1997年「Some Other Sucker's Parade」アルバムのタイトル曲まで全10曲。出世作となった1989年のアルバム「Waking
Hours」の曲と「Can You Do Me Good?の"Just Before You Leave"(確か、メンバー本人が一切登場しない唯一のPV)が1曲も収録されていないのが残念だが、その分1998年のワールドカップ、スコットランドチームのオフィシャル・テーマソングになった"Don't
Come Home Too Soon"も、1998 年のベスト盤収録の"Cry To Be Found"も入っているし、目ぼしいPVはほとんど押さえられているから良しとしましょう。華やかさこそないものの、Del
Amitriのクールさ、渋みのある格好良さはこの10曲で十分確認できる。個人的ベスト作は物悲しい"Driving
With The Brakes On" 歌詞の世界を絶妙に映像化していると思います。 (7/11/2005) |
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↓207↑ |
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Del Amitri
/Some Other Sucker's Parade
(import CD/1998)
(Japanese CD/1998)
★★★☆ |
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メンバーの意図した通り、アコースティック・ギターの割合を極力抑え、エレクトリックを中心にストレートでコンパクトなアプローチに挑んだアルバムだが、「Twisted」よりかなり軽い音に感じるのはギター・サウンドからささくれだった荒さが無くなり、キャッチーな歌メロをより引き立たせるポップなプロダクションを志向したからだろう。ジャスティンのメロディ・センスと、力強くも温かい歌の魅力が素晴らしく噛み合った頭3曲〜"Not
Where It's At" "Some Other Sucker's Parade" "Won't
Make It Better"のインパクトはかなりのもので、その超ポップな旋律に気持ちが高揚するが、その勢いがアルバムが進むにつれて落ちてきてしまうのが玉に傷。アルバムの統一感を図ったのはいいが、その分メリハリに欠け、「Twisted」より冗長に感じるアルバムになってしまった。 (7/31/2005) |
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↓206↑ |
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Del Amitri/Twisted
(Limited Edition import CD/1995)
(Japanese CD/1995)
★★★★☆ |
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このアルバムが出た頃ネットをやっていたらもしかしたらDel Amitriのファン・サイトを作っていたかもしれない(笑) 一時はそれくらいのめり込んでいたバンドだ。このアルバムからカットされたシングルCDも片っ端から集めたしね。スコットランド出身でありながら、アメリカンな土着的サウンドをベースにし、ポップでわかりやすいメロディを盛り込んだ「普遍的無国籍サウンド」は2nd「Waking
Hours」(1989)、3rd「Change Everything」(1992)で既に完成され、アメリカでもヒットを記録していた。この4thアルバムではその方向性を一歩進め、ニール・ヤングやSmashing
Pumpkinsといった時代のバンドから影響を受けた、より生々しくへヴィなアプローチを取り入れている。ラウドなギターを基調にしつつも、要所でアコースティックなサウンドも取り入れ、それまでのDel
Amitriのアルバムに欠けていた、強烈なダイナミズムと楽曲の多様性を見事に同居させることに成功している。名匠ボブ・クリアマウンテンがミックスを手掛け、音の整合感は文句のつけようがないし、楽曲のクオリティもDel
Amitri史上ベストといえる素晴らしさ。ついに全米チャートのトップ10入りを果たした"Roll To Me"をはじめ、モータウン風リズムとラウド・ロックを融合させた"Start
With Me" まるで映像が浮かび上がってくるようなドラマ性を持つ"Driving With The
Brakes On" イギリスではアルバムのリーダー・トラックになったミディアム・テンポ"Here
And Now" アコースティックの美しいバラード"Tell Her This"と5曲ものシングル・ヒットが生まれた。ちなみにこの「Twisted」イギリス版の限定バージョンには、6曲のライヴ音源が収録されたボーナスCDがついていた。もし見かけたら即ゲットっす! (7/31/2005) |
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