Disc Review
旧譜、新譜問わず、お勧めのCD/DVD作品を紹介します。
新譜(おおよそ3ヶ月以内にリリースされた作品)には
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評価の
は5つで最高。2つで大体平均点と考えてください(は1/2点)
※2003年9月以前のCDレビューはこちらです
2003年
10月(27〜41) / 11月(42〜52) / 12月(53〜54)
Loey Nelson/Venus Kissed The Moon <41>Loey Nelson
/Venus Kissed The Moon
(import・1990)
  このローイ・ネルソンというミュージシャンに関する情報は非常に少ない。この「Venus Kissed The Moon」はこのウィスコンシン州出身の女性シンガーが1990年にリリースした唯一のアルバムである。名手デイヴィッド・カーシェンバウムをプロデューサーに迎え、バック・ミュージシャンもラス・カンケル(ドラムス)、レランド・スクラー(べース)、チャーリー・ジョルダーノ(キーボード)とツワモノ揃い。 泥臭いルーツ・ロック、ジャジーな曲からポップな"East Of The Sun"(私のフェイバリットはこれ!)のような曲まで、とてもバラエティに富んだ内容。逆にいうと、この焦点が絞りきれていないのが売れなかった原因なのかな、とも思うのだが。さて、ローイ・ネルソンは次に紹介するジミー・ライサーのアルバムにも参加していて…。 ★★★
Jimmy Ryser/s.t. <40>Jimmy Ryser/Jimmy Ryser(import・1990)
  以前ジミー・ライサーのオフィシャル・サイトで彼のCDを買ったら、なんと私のメアドにジミー本人がメールをしてきてくれ、その後何通かメールをやりとりしました。

「今あなたのデビュー・アルバムのクレジットを見たら、ローイ・ネルソンがゲストで参加していますね。私、ローイのアルバム好きなんです。過去、ローイについて話している人を見たことは一度もないけれど…。やはり(「Jimmy Ryser」アルバムのプロデュースをしている)デイヴィッド・カーシェンバウムが連れてきて歌わせたのですか?」

「そう。ローイと一緒に仕事するのは楽しかったよ。そのことでひとつ面白い話があってね…」

「僕のリクエストで、デイヴィッドがローイを連れて来てくれて…彼女と一緒に歌うのは楽しかった。最後には、僕たちは「リーサル・ウェポン2」を一緒に見に行ったりしたんだけど、まあそれはともかく。その日僕は異国料理を食べ過ぎて、ええと、お腹に"ガス"が溜まってしまったんだ。で、ローイがやってくる前に一晩中(スタジオで)おならをしていたんだ。で、皆その場から離れてしまった。つまりその、ニオイが物凄かったんだな(笑)  僕とローイは小さなブースで一緒に歌っていたわけなんだけれど、その最中に僕は誤ってローイに向かっておならしてしまったんだ。僕が歌うのをストップしてローイに『あ、ご、ごめんなさい!』と、誤ったのを見て、(ブースの外にいた)デイヴイッドと、エンジニアのロス・ホガースは"こと"に気づいた。『おい、ジム。お前まさかやってないよな?! まさか中でおならしてないだろうな?』  あれは凄く気まずかったなあ。ローイには訳を全て話したんだけど、彼女は凄くおかしかったみたいだ」

…と、レコーディング時の面白いエピソードを提供してくれたこのジミー(ジム)・ライサーも実はオハイオ州の出身。シンガー、ギタリストと同時にヴァイオリニストでもあるジミーのアイデンティティが十二分に発揮されたこのメロディアスなロック・アルバムからはシングル"Same Old Look"(この曲のみジム・ヴァランスのプロデュース)というヒット曲も生まれ、デビュー作としては十分な成績を収めた。持病が悪化したこともあり、ジミーのこの後の活動は順風満帆とはいってはいないのだが、1998年の「Let It Go」をはじめ、他のアルバムもこのデビュー作に何ら引けをとらないクオリティを備えている。 
★★★★☆
Kim Richey/Glimmer <39>Kim Richey/Glimmer
(import・1999)
   そしてこの才能溢れる女性シンガー・ソングライターもやはりオハイオ州の出身なのであった。どうしてこうもオハイオ産の音楽は自分の趣味に合うのだろうか!? スージー・ボガス、パム・ティリス、トリーシャ・イヤウッドといった人気カントリー・シンガーに数多くの楽曲を提供してきた裏方(=ソングライター)としての仕事を経て、キム・リッチーがセルフ・タイトルのアルバムで遅いデビューを飾ったのが1995年。続く1997年の2nd「Bitter Sweet」と、傑作を立て続けにリリースし、主役としてその実力をアピールしたキムが、カントリーというジャンルで括らなくともトップ・クラスのソングライターであることを証明したのがこの3rdアルバム「Glimmer」である。デイヴィッド・ボウイ、Police、XTC等数多くのビッグ・ネームの名作を手がけたヒュー・パジャムをプロデューサーに迎え、よりポップで洗練されたアレンジで、持ち前の美しいメロディを磨き上げている。完璧に構築された楽曲群にエモーショナルな"うた"。前進への意欲と普遍性が見事に同居した、90年代を代表するポップ・アルバムの名作。 ★★★★★
Beau Coup/Born&Raised(On Rock&Roll) <38>Beau Coup
/Born&Raised(On Rock&Roll)
(import・1987)
  Beau Coupは下のBreathlessの項で紹介しているジョナ・コスレンのバンド、Heroesに在籍していたキーボーディスト兼ソングライター、デニス・ルーインがヴォーカリストのトミー・アマトに誘われたのをきっかけとしスタートする。メンバーはデニス、トミーに加えトミーの兄弟フランク(ヴォーカル、パーカッション)とビル・マーチ(べース、バックグラウンド・ヴォーカル)  キーボードを全面的にフィーチュアした、いかにも80年代的な洗練されたポップ・ロックで、"これ"という決めてには欠けるものの、AOR的なバラード"Still In My Heart"から、ハードにロックする"Hold On Me"まで曲調はなかなか多彩。アルバムからは美しいコーラス・ハーモニーが印象的な"Sweet Rachel"がヒットを記録した。ゲスト・ギタリストとしてティム・ピアース、後期Michael Stanley Bandのメンバーだったダニー・パワーズも参加。余談だが、デニス・ルーインはエリック・カルメンの遠い従兄弟である。 ★★★
The Best Of Breathless <37>Breathless
/Picture This〜The Best Of Breathless(import・1993)
  1977年までMichael Stanley Bandに在籍していたジョナ・コスレン(ヴォーカル/ギター)が結成したバンド、Breathlessの2枚のアルバム(「Breathless」(1979)  「Nobody Leaves This Song Alive」)からセレクトされたベスト・アルバム。Breathlessはマーク・アブセク(キーボード・Donnie Iris、Wild Cherry)、ケヴィン・バレンタイン(ドラムス)といったオハイオ周辺の敏腕ミュージシャンを擁しており、ドライヴするギターと、重厚なキーボードが絡みあった洗練されたサウンドで、爽快感溢れるポップなメロディを楽しませてくれる。アルバムのトップに収録された"Takin' It Back"が1980年に小ヒットを記録。 ★★★
Kevin Raleigh/Delusions Of Grandeur <36>Kevin Raleigh
/Delusions Of Grandeur
(import・1989)
  現在では入手が極めて困難な、元Michael Stanley Bandのヴォーカリスト/キーボーディスト、ケヴィン・ラレイ唯一のソロ・アルバム。1989年アトランティックからのリリース。過去、このアルバムほど中古CD屋で見つけて嬉しかったCDはない(笑)  ケヴィンの透明感ある伸びやかな歌声を、キーボードを駆使した産業ロック寄りのアレンジで聞かせる洗練されたアルバムで、全編通してとにかくメロディアス。バグパイプ風の荘厳なイントロから始まるキャッチー極まりない"Anyone With A Heart"に、凝ったギター、コーラスのアレンジと美しいメロディの絡みが絶妙な"Real Life"  シリアスなテーマを扱った緊張感のある"The Art Of War"  心弾むようなポップなメロディに、ダリル・ホール風のケヴィンの歌いまわしが聞ける"I'll Make A Deal With You"  Michael Stanley Bandの"Someone Like You"(↓の「You Can't Fight Fashion」アルバム参照)を意識したかのような"Someone Special"等、印象に残る曲は多い。後にローラ・ブラニガンも歌うアンディ・ゴールドマーク、スティーヴ・キプナー作の"Moonlight On Water"が小ヒットを記録。 ★★★☆
Michael Stanley/The Ground
<35>Michael Stanley
/The Ground(import・2003)
  マイケル・スタンリーは、今なお彼の地元クリーヴランドとその周辺で根強い人気を誇るベテラン・ミュージシャン。60年代末にSilkというバンドでデビュー。70年代初頭にソロ・アルバムを2枚リリースした後Michael Stanley Bandを結成し、80年代にはセールス面でも成功を収めた。 活動自体は地味ながら、90年代以降も精力的に活動しているマイケルの、これは2000年の「Eighteen Down」以来3年ぶりのソロ・アルバムである。この人の音楽の根っこには土着的なアメリカのルーツ・ミュージックがあるが、曲調がどうであれ常にそこにはキャッチーなメロディが備わっており、適度に洗練されたアレンジと相俟ってわかりやすくロックを聴かせてくれるのが魅力だ。ほのかな哀愁と美しい歌詞がマッチした"My Last Day On Earth"はこのアルバムを代表する名曲といえる。今回はマイケルのお気に入りミュージシャンであるBill Deasy(The Gathering Field)の"Bound To Be"に加え、チャーリー・セクストンの"Ugly All Day"もカヴァー。 ★★★☆
Michael Stanley Band/You Can't Fight Fashion <34>Michael Stanley Band
/You Can't Fight Fashion
(import・1983)
  オハイオ生まれの7人編成のバンドが、1983年にリリースしたアメリカン・ロックの隠れた名盤。ツイン・ヴォーカル、ツイン・ギター、ツイン・キーボード+サックスという独特の編成が生み出す多様性が、名プロデューサー、ボブ・クリアマウンテンによって完璧に統合されており、ある意味バンドの集大成的な作品といえる。Michael Stanley Bandの最大の魅力は、リーダーであるマイケル・スタンリー(ヴォーカル/ギター)と、ケヴィン・ラレイ(ヴォーカル/キーボード)という全くタイプの異なる2人のソングライターを擁しているということである。ドン・ヘンリーやブルース・スプリングスティーンに通じるアーシーでタフなロックンロールを得意とするマイケルと、持ち前の伸びやかなハイトーン・ヴォーカルを活かした叙情味溢れるメロディを聴かせるケヴィン。土着と洗練の狭間を絶妙に行き来する独特のサウンド、楽曲のクオリティ、コマーシャリズムが一体となった本作はセールス面でも好成績を記録した。100箇所もの町ごとにそれぞれ独自のバージョンが存在するというマイケル作の"My Town"が全米Top40入りする大ヒット。ケヴィンのメロディ・センスが冴え渡る2ndシングル"Someone Like You"は史上に残る名曲! ★★★★☆
The Darkness/Permission To Land
<33>The Darkness/Permission To Land(import・2003)
  既に本国イギリスでは大ヒット、話題を巻き起こしている4人組の新人バンドだが、確かにこれは噂に違わぬ素晴らしい出来映え。フレディ・マーキュリーを彷彿とさせるオペラティックなハイ・トーン・ヴォーカル("Givin' It Up"はまるでQueenの"Hammer To Fall")にAC/DC的な切り裂きリフ。Def Leppardに通じるソリッドなブリティッシュ・メタルのセンスも加味された、懐かしくも新鮮なサウンドを展開している。そのキャラクターも含めた総合的なイメージで、これだけのインパクトを与えてくれるバンドは長らく出てこなかったのではないだろうか。これからどれだけ巨大になっていくのか本当に楽しみ。 ★★★☆
Movin' Jelly/Girls Trouble <32>Movin' Jelly/Girls Trouble(2003)
  Cheap Trick掲示板の方によく遊びに来てくださる、ユタカさん率いるMovin' Jellyの1stフル・アルバム。"パワー・ポップ"というのもまた非常に曖昧なジャンルで、個人によって定義も大きく異なるので、私は言葉にするのにいつも憚られてしまうのだが、この「Girls Trouble」に関してははっきり"パワー ・ポップの名盤"であると言い切りたいと思う。輪郭のはっきりしたキャッチー極まりないメロディに、クランチーなギター。ちょっぴり懐かしさを覚えるムーグ・シンセサイザーを配した多彩なアレンジ。12曲中2曲(うち1曲はNRBQのカヴァー"Magnet")を除く全ての曲のタイトルに"Girl"が入っているというある意味コンセプチュアルな構成は、ややもするとアルバムの色を画一的にしてしまう危険も孕んでいるが、抜群のメロディ・センスと曲調の幅広さで最初から最後まで飽きさせるということがない。そして特筆すべきは、そのメロディの魅力をしっかり伝える抜群の歌唱力。 張りのあるヴォーカル、そして美しいコーラス・ワークは聴いていて本当に心地よい。甘酸っぱくも力強い、つい一緒に口ずさんでしまう曲がいっぱい!
※バンドの最新情報と、CDの購入についてはMovin' Jellyのオフィシャル・サイトで。 ★★★★
Lou Gramm/Long Hard Look <31>Lou Gramm/Long Hard Look(1989)
  二重顎にぽってり突き出たお腹。その長髪こそ"ミュージシャンぽさ"を残しているといえなくもないものの、一見したところはほとんどプロレスラーのよう。この太った男がForeignerのルー・グラムの今の姿だとわかったときには絶句してしまったが、彼が90年代後半に大きな病気と戦っていたという事を知ってもっとショックを受けた。幸いにも現在はもう回復し、ステージで衰えを知らぬその強靭な喉を披露しているそう。ああ良かった。今度Foreignerが来日した時は絶対観にいくぞ。
   アルバムの総合力でいけば、ルーのベスト・ワークはForeignerの初期2作や「4」といったところでしょうが、このソロ第二作を挙げたのは大好きな"Just Between You And Me"が収録されているから。ピータ・ウルフのプロデュースは"磨かれ過ぎ"だけれど、この洗練されたサウンドの向こうから突き抜けて来るルーのタフな歌声にはやはり耳を引きつられずにはおかない。"Just Between You And Me"に続いてヒットを記録した"True Blue Love"も憂いのあるメロディを持っていてなかなか良いです。 
★★★
Martina Mcbride/Martina
<30>Martina Mcbride/Martina
(import・2003)
  今のアメリカのコンテンポラリーなポップ・カントリーを代表するような作品!ここ数年、多くの女性カントリー・シンガーがある意味極端ともいえるサウンドの洗練化を推し進める中、カントリー・ミュージックの伝統と土着性、そして素朴さを残しつつ、普遍的なポップ・カントリーを生み出しているマルティナの存在は貴重なのではないかと思う。1stシングル"This One's For The Girls"(歌詞は多くの女性の共感を呼びそう)の爽快なメロディ・センスに、圧倒的な歌唱力が映える美しいバラード"How Far" その他、プロデューサーとして名を連ねるマルティナが選び抜いた(に違いない)楽曲群には文句のつけようがなく、全編楽しめる極上のポップ・アルバムとして完成されている。 ★★★★
Martina Mcbride/Martina(DVD)
<29>Martina Mcbride/Martina
(DVD)(import・2003)
  で、マルティナ・マクブライドといえばその端正なルックスも魅力ということで、これはCDと同時に発売された5曲入りDVD。出世作となった'93年の2ndアルバム「The Way That I Am」収録の"Independence Day"といった曲から、  最新シングルの"This One's For The Girls"まで、新旧の代表的なビデオ・クリップを収録しており、日本のTVではなかなか目にすることが出来ない動くマルティナを楽しめる。3曲めの"Where Would You Be"のみ2002年のビデオ・ミュージック・アワードのライヴ映像であるが、これを見ればマルティナがいかに凄い歌唱力の持ち主かわかるはず。ちょっとコミカルな味を出した"When God-Fearin' Women Get The Blues"も楽しい。それにしてもマルティナの緑色をした瞳のきれいなこと! ★★★
Amy Grant/Simple Things <28>Amy Grant/Simple Things
  (import・2003)

  エイミー・グラントがアルバム「Heart In Motion」からヒット・シングルを連発していたのはもう12年も前のことなのか…と改めて思い返して時の流れの早さにゾッとしてしまったが、エイミーの清楚で柔らかな歌声と音楽は、ジャケットの写真にみる印象同様、長い月日を経ても全く変わっていない。クリスマス・アルバム、「Legacy...Hymn And Faith」(2002)と、しばらく完全なゴスペル・アルバムが続いていたので、コンテンポラリー・ポップ・ミュージックとしてのリリースは1997年の「Behind The Eyes」以来久しぶりになる。名の知れたCCM系の腕利きのミュージシャンに加え、ナッシュビルをメインに活動するシンガー・ソングライター、ウィル・オウズリー(元Semantics)を迎えたサウンドには隙がなく、美しいメロディを洗練されたアレンジで聴かせる。土着性は「Behind The Eyes」よりやや薄れた感が。ヒット曲"House Of Love"の再現を狙ったようなバラード"Beautiful"("House..."と同じく旦那のヴィンス・ギルとのデュエット)は予定調和的だし、アレンジの面で一部物足りなさを感じさせないこともないものの、飽きのこない好作品に仕上がっている。 ★★★
Marshall Crenshaw/What's In The Bag? <27>Marshall Crenshaw/What's In The Bag?(import・2003)
  このマーシャル・クレンショウという人は、デビュー作にして決定版的な作品を出してしまったのがある意味不運だったのかもしれない。素晴らしいアルバムをつくっても、結局はあの大傑作が比較対象になってしまうのだから…。しかし、90年代後半以降のMCの一連の作品にはもはや"曖昧"な評価を許さない有無を言わせぬクオリティが備わっている。前作スタジオ・アルバム「#447」同様ルーツ・ミュージックをべースに、MCの持ち前のポップ・センスが全編に染み渡った優れたロック・アルバムだが、2曲のインストゥルメンタルとPrinceの"Take Me With U"のカヴァーまで含み、バラエティは増している。今回も日本盤はリリースされないのかな…? ★★★★☆
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