Disc Review
旧譜、新譜問わず、お勧めのCD/DVD作品を紹介します。
新譜(おおよそ3ヶ月以内にリリースされた作品)には
マークがついています。
は管理人のお勧め度で、星5つで最高。
2つで大体平均点と考えてください(
は1/2点)
※2003年9月以前のCDレビューはこちらです
2004年
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2005年
1月
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2005年 9月(no.229〜)
243
Babyface/Grown & Sexy
Babyface/Grown & Sexy
(Japanese CD/2005)

★★★★
  やっぱりベイビーフェイスはこれでなくっちゃ!と、オープニングの"Tonight It's Goin Down"を聴いて思わずニヤリ。大胆にイメージ・チェンジを図った前作「Face 2 Face」(2001)は確かに変化への意欲を強烈に打ち出した力作であったけれども、私としてはベイビーフェイスには多少ワン・パターンになってもよいから(笑)  あくまでも繊細で柔らかなサウンドの上で、哀愁のメロディを歌っていてほしい。しかしベイビーフェイスとはよく名付けた(名乗った)もの。そのジャケットに表れた姿同様、年をとるということを知らないマイルドで艶やかなプリンのような声の魅力はやはり筆舌に尽くしがたく、そのヴォーカルを活かす凝りまくったコーラス・ワークと洗練されたバッキングで、耳に心地良すぎる空間を提供してくれる。共同プロデューサーとしてクレジットされ、ソングライティングでもベイビーフェイスと9曲を共作している新進のソングライター・グレッグ・パガーニとの相性もバッチリのようで、楽曲もプロダクション(相変わらずリズムのサウンドが最高)も全く隙が無い。個人的にはベイビーフェイスが奥さんに捧げたというバラード"She"が最も気に入った。  (9/20/2005)
242
Babyface/For The Cool In You Babyface/For The Cool In You
(Japanese CD/1993)

★★★★☆
  ベイビーフェイスの持つ繊細で緻密な音造りと、ソングライティングがミディアム〜スロウ・テンポのメロディアスな楽曲群の中で結実した名作。改めて聴いたらやっぱりスバラシ〜うっとり。楽曲のバラエティも豊かで、特に大ヒットしたアコースティックの"When Can I See You"をはじめて聴いた時は、その新鮮なアレンジに驚かされると同時に、あ〜やっぱり「いちばん美味しい曲」はちゃんと自分用に取っておくのか(笑) と妙に関心したもんです。他アーティストへの提供曲のパターンがやや食傷気味に感じられてきたところへ、改めて自らのポテンシャルをガツンとアピールした一枚。  (10/10/2005)
241
Bon Jovi/Have A Nice Day
Bon Jovi/Have A Nice Day
(Japanese CD+DVD/2005)

★★★★
  メロディの部分部分をとってみれば、あれ、このフレーズどこかで聴いたよな?というのが要所で発見でき、また楽曲のドラマの作り方もBon Joviのクラシックを踏襲したパターン満載で、これまでのBon Joviを追ってきたファンなら間違いなくすぐに親しめる内容になっている。「Bounce」は強烈に今という時代を意識したメッセージを、モダンなサウンドと極上のメロディの中で昇華させた、円熟を感じさせる傑作であったが、この新作はプロダクションを「Bounce」以前の方向に揺り戻した、王道Bon JoviサウンドといえるソリッドでストレートなHRサウンドで全編統一されている。ということは言い換えればサウンド面での新鮮味は薄いわけで、前述したように1stシングルの"Have A Nice Day"にしろ、ミディアム・テンポの"Bells Of Freedom"にしろ、自らの"遺産"を上手く再利用した佳曲といえる。元ネタがはっきり指摘できる、使い回しと揶揄されるギリギリの際どいパーツも結構あるが、自分たちが作り上げたスタイルを、これだけのポジティヴィティを持った明快なメロディで披露されたら何も文句はいえない。ほんと、楽曲のパーツをとってみると一見大したことなく思える部分が多いのだが、完成品になってみるとえらく凄みのあるロック・チューンになっているんだなあ。2曲目の"I Want To Be Loved"なんて、イントロの単純でありがちなリフとジョンの歌いまわし聴くと、え〜今時これかよ!?なんて思っちゃうんだけど、そのあとトーキング・モジュレーターが切り込んできて、ブリッジでバンド全体が力強い旋律を奏で、テンションが上がるとそこはもうBon Joviならではの世界なんだ。そして、改めて思ったのがジョンの"言葉"の選び方とその使い方の上手さ。メロディ・メーカーとしての才能は言うまでも無いが、1つの言葉の重みと、それをいかにインパクトあるメロディとして活かすか、というセンスがジョンはずば抜けていると思う。これは幅広い音楽的素養を持つジョンが自然に身につけたものなのだろう。アルバムは全体的にロック色が濃く、高いテンションを保ったまま進んでゆくが、楽曲のクオリティもバラエティも十分で、またサウンドも抑揚がきいているので最後まで飽きずに聴ける。20代の頃との歌唱の変化を指摘されもするジョンのヴォーカルであるが、私は適度に枯れた今のヴォーカルの方が落ち着いて聴けて好きだ。スペシャル・エディションには、昨年アトランティック・シティで行われたライヴとインタビューを収めたDVDがついてくる。 (9/20/2005)
240
Gretchen Peters/Trio Gretchen Peters/Trio
(import CD/2004)

★★★★☆
  「Gretchen Peters」(2000)、「The Secret Of Life」(1996/2001)、「Halcyon」(2004)と過去にリリースしたスタジオ・オリジナル作は何れも名作。このサイトでも全てのアルバムをレビューして賛辞を送っているが、この素晴らしいライヴ・アルバムを聴くと、実はグレッチェンの音楽の真髄はまだ私は知らなかったのだ…という思いさえ湧き上がって来る。各アルバムから満遍なく選曲された楽曲のクオリティは当然文句なしとして(ポール・サイモンのカヴァー"American Tune"  パティ・ラブレスが歌った"You Don't Even Know Who I Am"も収録)、グレッチェン(ヴォーカル、ギター)、バリー・ウォルシュ(ピアノ、ヴォーカル)、デイヴ・フランシス(アクースティック・べース、ヴォーカル)というトリオによるシンプルで端正なプレイが生み出す麗しい音空間の心地よさといったらなく、その生々しさもまるで目の前で演奏されているような錯覚さえ覚えるほど。そして、スタジオ録音を聴いてその上手さはわかってはいたが、ライヴでその伸びやかさと瑞々しさが一層鮮烈に伝わってくるグレッチェンのヴォーカル!  すんばらしぃ!!  音数の少ない清廉とした空間に響くこの美しい声こそがこのアルバムのハイライトかもしれない。改めて、現在のアメリカを代表する女性SSWのひとりだと思う。  ※このCDはグレッチェンのオフィシャル・サイトを通してのみ購入できるプレス枚数限定の商品です。  (9/17/2005)
239
Gretchen Peters/The Secret Of Life Gretchen Peters/The Secret Of Life
(import CD/2001)

★★★★☆
  前述したようにグレッチェン・ピータースのアルバムに外れはないが、まだグレッチェンを知らない人に敢えて1枚入門用を推薦するなら、このデビュー・アルバムにするだろう。アルバム・タイトル・トラック"The Secret Of Life"に代表されるように、楽曲のキャッチーさ、わかりやすさが小指の先くらい他のアルバムを上回っているように思えるから。トリーシャ・イヤウッドがカヴァーしてヒットを記録した"On A Bus To St. Cloud"に加え、2001年に再リリースされた際(管理人が所有しているのは再発版。オリジナルはジャケット写真も↑と異なる)にはマルティナ・マクブライドがヒットさせた名曲"Independence Day"がボーナス・トラックとして追加されさらに魅力を増した。しかし、この人のアルバムの日本版CDが過去一度もリリースされたことがないというのはあまりに悲しすぎる…(涙)  (9/19/2005)
238
Aslyn/Lemon Love Aslyn/Lemon Love
(import CD/2005)

★★★★☆
  これはイイ!!  オフィシャル・サイトで"Be The Girl"のPVを見て気に入り、アルバムを買ったのだが大正解だった。キュートでカラフルなジャケットは一見アイドル風の趣。、1曲めの"Just Enough"がスタートした時は「女の子版Jellyfish」みたいな感じなのかな〜と思ったのだが、全く違った。このフロリダ生まれのキュートなシンガー・ソングライターの歌う楽曲は、トラディショナルでありながら、モダンな感覚も十分に備えた、今時珍しいくらい直球勝負のロックである。印象としては60年代末〜70年代の風味が濃く出ているよう。しかし、そのメロディ、アレンジは出所がはっきり指摘できるあからさまな引用でも、"その時代"を生きていなかったおね〜ちゃんがディフォルメを含めて描くぼんやりとした情景でもなく、きちんと自分の血の一部になっている影響をアズリンというフィルターを通して表現した、ずっしりと重みのあるものである。とにかくメロディアスなポップ・ロックを書くソングライターとしてのセンスが抜群。アズリンのメイン・インストゥルメンツはピアノ、キーボード、ローズと鍵盤であるが、アレンジは決して鍵盤バリバリでなく、例えばアビー・ロード・スタジオで録音されたオーケストラのストリングスをフィーチュアした"Wally"のようにそれぞれの楽曲の骨組みを最大限に活かす柔軟なアレンジが施されている。作り込みすぎず、絶妙な装飾が施された楽曲は、時にディープなロック・ヴォイス、時にしっとりとした哀感を響かせる表情豊かなアズリンの声とともに思わず何度もリピートしたくなる麻薬的な魅力を持っている。どこか明るくなりきれないブリティッシュ・ロック/ポップ趣味を露にしながら、全体的にはラジオ・フレンドリー(キャッチー)なアメリカン・ロックにまとまった、絶妙なサウンドのさじ加減は、ガイ・チェンバース&リチャード・フラックとエリック・バレンタインとプロデューサーを使い分け、アメリカとイギリスの2箇所でレコーディングされているのも大きいだろう。とにかく、これだけツボにくる印象的なメロディを有した楽曲を12曲も連発されたら何もいうことなし。そこのお父さん、アズリンは若者だけに聴かせとくのは勿体無いよっ!あと、日本盤のボーナス・トラックも気になるんだけど、日本盤はCCCDなんだよぉ〜う(T_T)  (9/5/2005)
237
Jacquie Barnaby/Turn Off Your Radio Jacquie Barnaby/Turn Off Your Radio
(CD-R/2003)
★★★★☆
  しかし改めてインターネットは有難い。そして友達も有難い(きょーこさんに感謝!)こうして普通に生きていたらまず知らないままに違いなかった素晴らしい音楽との出会いを与えてくれるのだから。シカゴ、ボストン、ニューヨーク等アメリカ各地とイギリスに在住経験があるという女性SSW〜ジャッキー・バーナビーによる(恐らく)ファースト・ミニ・アルバム。唯でさえ日本に情報が入ってきていない上、既にオフィシャル・サイトのショップからも消えているようなレア・アイテムではあるのだが、これがとんでもなく素晴らしい。7曲収録された全てがジャッキーのオリジナルで、全てが彼女のメイン・インストゥルメンツであるピアノによる弾き語り曲。弾き語りというと、じみ〜で淡々としたレイドバックした世界を想像する人が多いかもしれないが、このアルバムにはそういったセオリーは当てはまらない。ディープで、伸びやかでまるで清流のように美しい声と、躍動感に溢れる多彩なタッチのピアノ。メロディアスな粒ぞろいの楽曲群。そのルックス(↓の「Washington Square」のジャケット写真参照)同様、清楚で知的な、そして同時に芯の強さも伺わせる深みと親しみやすさを備えた音楽だ。あ〜"All Over"のメロディと歌詞が頭にこびり付いて離れないっ!  大好き!  (9/19/2005)
236
Jacquie Barnaby/Washington Square Jacquie Barnaby/Washington Square
(import CD/2005)
★★★☆
  ギター、べース、ドラムスにストリングスを加えたバンド編成で録音した、ジャッキー・バーナビーの1stフル・アルバム。インディーズのアルバムでこれだけヴォーカル"聴かせて"くれるアルバムもそうそうないと思うのだが、インパクトの弱さを感じてしまうのはやはり先に「Turn Off Your Radio」を聴いてしまったからか。"シンプルであることの美しさ"と"ミニマムであるが故の表現の力強さ"を改めて教えてくれた「Turn Off」と比較すると、インパクトでは劣るものの、ジャッキーの深く、凛としたこの声の魅力はバンド編成の中でも鮮やかな情景を描いている。楽曲は3曲が「Turn Off」と重複。しかし、"All Over"だけはちょっと……やっぱり「Turn Off」バージョンの方が好き。  (10/29/2005)
235
Swirl360/California Blur
Swirl 360/California Blur
(Japanese CD/2005)

★★★☆
  最初のインパクトは大したことなかったのだ。が、リピートするうちにどんどんハマっていった。デニー(ヴォーカル、ギター)とケニー(ギター、プログラミング、ヴォーカル)のスコット兄弟を中心とした4ピース・バンドSwirl 360による2ndアルバム。演奏面は安定感はあるが、特筆すべきプレイやフレーズが飛び出すわけでもない。ヴォーカルはメロディアスではあるが、それほどパワーや個性は感じられない。楽曲も突出した"歴史的名曲"が収録されているわけでもない。ついでにいうならルックスも並みの上。そこらへんのお兄ちゃんという感じか。ストレートな曲展開にポップなメロディ。ラウドなギター。この手のアメリカン・ロックは"大好きであるがゆえ"、評価も厳しくなってしまう私であるが、ついつい繰り返して聴いてしまうSwirl 360の魅力は、勢いやアグレッシヴさは控えめに、あくまでもメロディの良さを最大限に活かす、古きよきアメリカン・ポップ・ミュージック的センスが満載された楽曲にあるのだと思う。よって同時代的なセンスは希薄ではあるのだが、そのキャッチーで意外なほど多彩な楽曲は十分すぎる普遍性を持っているといえるだろう。で、調べてみたら1998年(もう7年前だ)にデビュー作「Ask Anybody」(管理人未聴)をリリースしたときメンバーは既にそれなりの年齢だったようで、じつはかなりの経験を積んだ人たちだったんだね。ブックレット内での写真では兄弟の片方がファンであるCheap TrickのTシャツを着ているけれど、彼らは70年代のCheap Trickをリアル・タイムで経験している世代なのだ。この熟成されたメロディ/サウンドは伊達じゃない。そのCheap Trickにも通じる、存在感のあるべースを配した腰のすわったサウンドと、どこか明るくなり切れない哀感を帯びたメロディもSwirl 360の魅力である。日本盤ボーナス・トラックを含めると63分という長さなのに、最後までダレずに聴かせるのだから大したもの。ロジャー・マニングがゲスト参加している。  (9/12/2005)
234
Journey/Generations
Journey/Generations
(Japanese CD/2005)

★★★
   間違いなくライヴでもオープニングを飾るのだろうと予想できる、軽快かつ腰のすわったHRチューン"Faith In The Heartland"は非常にワクワクさせるオープニングだ。プログレッシヴ且つハードな「Red 13」(2002)と、メロウでキャッチーな、Journey節ともいえるメロディの魅力が満載された前作スタジオ「Arrival」両方の美点が活かされた楽曲群は、伝統を受け継ぎつつ新味も加えた意欲作…と評してよいと思うが、何度繰り返し聴いても拭えないこの違和感は何じゃらほい?  昨年の来日公演でも披露されていたように、全員のメンバーがヴォーカルをとれるというバンドの特質を活かした、楽曲ごとのリードVoの振り分けは確かにアルバムのバラエティに寄与しているが、出来上がってみれば結局は"上手いけど個性不足"な楽器隊のヴォーカルと、スティーヴ・オウジェリーのヴォーカルの素晴らしさが改めて露呈しただけなのであった。ディーン・カストロノヴォが歌うミドル・テンポ"A Better Life"はディーンが歌う必然性が全く感じられないし、ニール・ショーンの声(Tr.9"In Self Defense")も、ギターだけにしておけば…と思ってしまう地味さ。ジョナサン・ケインの歌った"Every Generationは、楽曲のクオリティ自体がそこそこなのでその美声を活かす以前の問題だが、これもジョナサンがリードVoをとった日本盤ボーナス・トラックの"The Pride Of The Family"がなかなかの曲で救われた。ジョナサンのソロ・アルバムを聴けばわかるように、やはりジョナサンの声が最も活かされるのはこういったスロウ〜ミディアムの哀メロ曲でしょう。最も心配していたロス・ヴァロリーのリード・ヴォーカル曲"Gone Crazy"は、ロスの声とキャラクターにぴったり合った楽曲で、しかもアルバム終盤を締めるアグレッシヴなサウンドを持っており、以外に良かった。まあ、いろいろ御託並べましたが、言いたいのは、

ライヴとアルバムは分けて考えてくれ〜、ということと。

これじゃオウジェリーが可哀想。

…という2点。しかし、オウジェリーがリードをとった楽曲が軒並み平均点以上のクオリティ、中でもオウジェリーが単独で書いたメロウな"Butterfly(She Flies Alone)"が非常に素晴らしいのと、アルバムの構成とまとまりを無視すると、ニールのエナジー全快のギター・プレイが堪能できるので、まずは満足できるアルバムとなりました。  (9/1/2005)
233
Steve Walsh/Shadowman
Steve Walsh/Shadowman

(import CD/2005)

★★★☆
  Kansasのブレイン、スティーヴ・ウォルシュ(ヴォーカル、キーボード)による、2000年リリースの「Glossolalia」(管理人未聴)以来の3rdソロ・アルバム。どういう繋がりなのかわからないが、Collective Soulの最新作「Youth」から参加したギタリストのジョエル・コッシェとTwisted Sisterのジョー・フランコが全面参加。元Kansasのデイヴィッド・ラグスデイルもバイオリンでゲスト参加している。正直いうと、スティーヴとKansasには過去見切りを"つけかけた"時もあった。ヴェテラン・ミュージシャンなら陥ってもおかしくない、アイデンティティ・クライシスに至る小さな亀裂が音に見え隠れしていることもあったが、スティーヴは驚くほどタフに、スマートに時代を生き抜いてきた。声量もなくなり、70年代とはまるで別人になってしまったかのような荒い声になってしまったスティーヴだが、今ではそれを完全に"新たなヴォーカル"として確立させ、その声を活かす楽曲がしっかりつくれているのがスティーヴの対応能力の素晴らしさだ。不思議なくらいキーボードが目だたない、ギター・オリエンテッドなプログレッシヴ・ハード・ロック。現代的な感覚を持ちつつ(ジョエル・コッシュの起用は吉と出た)、"Pages Of Old"のような土着的でトラディショナルなサウンドで多様性をアピールし、Kansas風味は"After"のアレンジにちょっと見られるくらいでKansasとの折り合いもきっちりつけている。オープニングのアグレッシヴな"Rise"を聴くととても50代半ばのミュージシャンがやっているとは思えない。凄いわ。派手さはないが、練りこまれた良質の楽曲が揃った好盤。  (9/20/2005)
232
Steve Walsh/Schemer Dreamer Steve Walsh/Schemer Dreamer
(Japanese CD/1980)

★★★☆
  そのもったりしたエナジー不足の楽曲群から、明らかなインスピレーション不足とバンドとしてのまとまりのなさが見て取れた「Monolith」(1979年7月)アルバムのリリース後Kansasはその活動にひと区切りをつけ、メンバーはそれぞれソロ活動を開始する。改めてデータを確認して興味深かったのが、スティーヴ・ウォルシュはこの1stソロ・アルバムを「Monolith」アルバムのリリースより前〜1979年2月には完成させていた事実である。「Schemer Dreamer」は完成から発売までに1年を要したアルバムなのだ。このKansasとは対照的にストレートでアッパーなロック色の濃いアルバムを作った後、どのような気持ちでスティーヴはバンドに戻っていったのだろうか。ホーン・セクションやコーラス・ハーモニーで飾り立て、凝ったアレンジが施されてはいるものの、アップテンポのロック・チューンは少々面白みに欠け、強い印象を残すのは"So Many Nights"  "Just How It Feels"というKansasの方向性に近い哀愁のバラードというのはある意味皮肉だ。が、このアルバムは後にkansasに参加するスティーヴ・モーズをゲストに迎えた最後の曲"Wait Until Tomorrow"で大演壇を迎える。アルバム全体としての完成度は今一歩ながら、Kansasとはまた違うステージでスリリングなプログレッシヴ・ハードロックの名曲を完成させたスティーヴが得たものは大きかったに違いない。  (9/20/2005)
231
Kerry Livgren/Seeds Of Change Kerry Livgren/Seeds Of Change
(Japanese CD/1980)

★★★★☆
  スティーヴ・ウォルシュのソロ・アルバムと同時期にリリースされた、Kansasのもう一人のブレイン、ケリー・リヴグレンの1stソロ。これはKansasファンは勿論、メロディアスなアメリカン・ハードが好きなファン必聴のアルバムだ。Kansasの各メンバーをはじめ、ゲスト・ヴォーカリストにデヴィッド・パック(Ambrosia)、ジェフ・ポラード(Le Roux)、更にはロニー・ジェイムス・ディオも歌っている豪華プロジェクトだが、これだけ個性派のヴォーカリスト達を迎えながらアルバムの流れを破綻させずに優れた統一感を与えているものは一体何なのか?実はこれは日本盤ライナー・ノーツでも全く触れられていない事なのだが、敬虔なクリスチャンであるケリーは、クリスチャン・ミュージックを意図してこのアルバムを製作したそうなのだ。それを踏まえれば、参加メンバーの人選やゴスペル調のアレンジにも納得がいく。デヴィッド・パックは自己のアルバムでもクリスチャン色を強く打ち出した楽曲を歌っているし、ジェフ・ポラードがLe Rouxを脱退したあと宣教師の道を選んだのはよく知られる話。逆に不思議なのが、当時Black Sabbathに在籍していた御大ロニーの起用だ。ケリーが何故敢えてサタニック・バンド"誤解"を受けていたBlack Sabbathのメンバーをフィーチュアしたのか真の意図は不明だが、ロニーがこのアルバムにおいて、ケリーのメッセージをしっかり伝える説得力十分の素晴らしい歌唱を聴かせているのは事実である。名曲、名演揃いのアルバムだが、特に素晴らしいのがラストの"Ground Zero"(ヴォーカルはディヴィッド・パック) この曲の持つドラマ性と叙情性、メロディ・ラインはまさにケリーの真骨頂だ。 (9/20/2005)
230
Kansas/Sail On Kansas/Sail On
(import CD+DVD/2004)

★★★★☆
  活動30周年を記念してリリースされた、CD2枚、DVD1枚をセットにしたボックス・セット。日本版出るかと思ったら結局出なかったねー。主要な代表曲、ヒット曲を年代順に並べたCD2枚(Disc 1はデビュー作から「Leftoverture」アルバムまで。Disc 2は「Point Of Know Return」アルバムから、「Somewhere To Elsewhere」アルバムまで)は、非常に無難な選曲で、レア曲、未発表曲の類は一切収められておらず安心して楽しめる半面、アルバムを全て揃えているファンにとっては目新しさは感じない。となると、期待はDVDにかかるわけだが、これが"ファン以上マニア未満"の私などにとっては感涙ものの内容なのだ。70年代後期〜80年代の代表曲のプロモ・クリップも私はほとんど未見だったので新鮮に楽しめたが、ハイライトはやはり1974、1975年の「Rock Concert」におけるライヴ映像だろう。若き日のメンバーのエナジーに満ち溢れたプレイには背筋がゾクゾクするほどの緊張感と感動を覚える。特に"Journey From Mariabronn"の凄まじさといったら!  DVDでは、曲と曲の合間に各メンバーのコメントも収録。敢えて注文をつけるなら、「Device Voice Drum」の曲は外して、ここから漏れているPVをもっと収録して欲しかったかなと。  (10/10/2005)
229
Kansas/Kansas Kansas/Kansas
(import CD/1974)

★★★★☆
  アルバムとしてみれば、サウンドの統一感に欠け、コンセプチュアルなテーマがあるわけでもない本作は、アルバム全体としての流れでドラマを生み出してゆくプログレッシヴ・ロック的な完成度とはむしろ反対をいっていると思える面もある(とくにアナログでいうA面) しかし、個々の曲のクオリティはデビュー・アルバムにして既に匠といえる域に達しており、ノリの良い"Can I Tell You"から組曲 の大作"Aparch"〜"Death Of Mother Nature Suite"までバラエティに富んだ楽曲で全く飽きさせるということがない。まさに持ち得るアイディアを全て注ぎ込み、卓越したテクニックで具現化した、といった感がある。"Lonely Wind"
"Journey From Mariabronn"といった名曲を軸に、当時としては異端を極めた(であろう)無国籍な方向性を強烈に提示した"アメリカン・プログレ・ハードの素"的傑作。個人的には、Kansasのスタジオ作では「Point Of Know Return」と並び最も愛聴してます。  (10/29/2005)
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